12年ぶりの復活! 新生「DESIGNTIDE TOKYO」はどこに向かう?【デザインウィーク関連企画④】 | 武田悠太さん
「デザインの手前」は、デザインに関わる編集者2人が、さまざまなクリエイターをお招きし、デザインの本質的な価値や可能性についてお話しするトークプログラムです。ニュースレターでは、最新エピソードの内容をテキスト化してお届けしています。今週のゲストは、11月27日から12月1日まで日本橋三井ホールで開催されるDESIGNTIDE TOKYOの共同創設者、ログズ株式会社の武田悠太さんです。
12年ぶりに復活するDESIGNTIDE
原田:今週も秋の東京のデザインウィーク月間的な企画を引き続きお届けしていきたいと思っています。前回までは、東京のデザインウィークの期間に僕らが見た展示の話や、そうした展示に実際に関わられているデザイナーの方々をゲストにお呼びする企画をお届けしてきましたが、今回はこれから開催されるイベントについてのお話になります。今日もゲストをお招きしています。11月27日から12月1日まで、日本橋三井ホールで開催されるデザインイベント「DESIGNTIDE TOKYO」の主催者の1人であるログズ株式会社の武田悠太さんです。武田さんよろしくお願いします。
武田:よろしくお願いします。
原田:DESIGNTIDEは、世代にもよると思いますが、デザインに関わられている方の中には聞いたことがある方が多いと思いますが、もともとは2000年代、2005年頃にスタートしたイベントです。そこから少し名前を変えたりしながら2012年まで続いたイベントで、それが今回12年ぶりに復活するということなんですが、山田さんは以前のDESIGNTIDEには足を運ばれていましたか?
山田:そうですね。初回から行っていますが、名前って変わりましたっけ?
原田:「DESINGTIDE」で始まり、「DESIGNTIDE TOKYO」になってという変遷があったみたいですね。さらに遡ると、東京デザイナーズブロックというものもあったりして、そういうものの流れを汲んでいる東京のデザインイベントを代表するもののひとつだったと思うのですが、それが今回久しぶりに復活するということで、もともとDESIGNTIDEをやられていた松澤剛さんと共同ファウンダーとしてクレジットされているのが、今日お呼びしている武田さんです。松澤さんはE&Yというファニチャーレーベルの代表であったり、業界ではよく知られている方ですが、今日はあえてというか、デザイン業界に普段いらっしゃらない武田さんがなぜこのイベントにこういう形で関わられているのかというところに凄く興味があり、お越しいただきました。
実は今回のDESIGNTIDEには、「デザインの手前」も少し関わっていたりするので、最後にその話もできればと思っています。
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原田:早速ですが、DESIGNTIDEが今回12年ぶりに復活することになった経緯と、武田さんの関わりについて聞かせていただけますか?
武田:はい。僕はもともと、老舗の衣料品問屋の4代目として生まれてきまして、アートとかそういうものにはあまり興味がなかったんです(笑)。そこから色んな経緯がありまして、まずDDD HOTELというホテルを立ち上げることになりました。その中でアートギャラリーやnolというレストランをやっていたりするのですが、そういう自分のブランドに関わらず、もう少し幅広く文化やクリエイティブというものに貢献したいと思うようになり、その結果、「EASTEAST_TOKYO」というアートフェアを主催することになりました。
ちょうどその時に、今回のDESINGTIDEに参加してくれている岩本航大くんというプロダクトデザイナーから、「武田さん、EASTEAST_みたいなことってプロダクトデザインでもやらないのですか?」という話があって。僕自身、あまりデザインというものに関わりはなかったんのですが、何回も話していく中でたしかに本当にやった方がいいのかもしれないなと思うようになって。ただ、自分で新しく立ち上げるのではなくて、続いてきたものをもう一度復活させるという形でデザインのイベントができないかということで松澤さんに相談しにいって。「武田くんがやるんだったら、やってみたらいいんじゃない」とお話しいただき、今回一緒にイベントをすることになったというのが経緯になります。
原田:EAST EAST_TOKYOのようなイベントをプロダクトデザインの世界でもということですが、そもそもこのEASTEAST_TOKYOというのはどういうイベントだったのでしょうか?
武田:EASTEAST_TOKYOは2023年2月に行われたアートのイベントで、ちょうどコロナが明けて人々がコミュニティを渇望してた時期でした。近年のアートフェアやイベントというものが、作家及びその周辺にあるコミュニティから作品自体を切り離してホワイトキューブに飾ってしまうことに対して違和感を感じていた作家やギャラリーとともに、作品やアーティストではなくコミュニティを中心に展示、紹介していくということを目指して開催したアートイベントでした。
デザイン業界でも同じだと思うのですが、日本のクリエイティブシーンというのはある一定の人に権威がある程度集まって、限られたルートでしか出世できず、なかなかオルタナティブな選択肢が起こり得ないみたいなところがある。これは美術業界にもあるような気がしていて、それをどうやって打破するのかというところが大きなテーマになっていました。
32組のデザイナーが参加するメイン展示
原田:今回のDESIGNTIDE TOKYOは、どんな場所でどういうことをされるものなのかというところもぜひ聞かせてください。
武田:DESIGNTIDE TOKYO2024は、日本橋三井ホールで開催します。(過去の)DESIGNTIDEに実は僕行ったことがないのですが(笑)、でもおそらく「DESIGNTIDE」と聞いてみなさんが思い浮かべるのは、シュッとした硬派なデザインがきちっと並んでいるようなイメージだと思うのですが、僕たちの今回の問題意識としては、デザインの意味というのを改めて問い直さなくてはいけないのではないかというところが大きくあります。
いま当たり前のようにみんなが持っているiPhoneというのは世界で最も優れたデザインのプロダクトなんだろうと素人ながらに思うんですね。そういう時代で、街を歩いていると基本的には小綺麗なものしかなくて、いま「エモい」と言われるのものはむしろちょっとダサいという意味とほぼ一緒という時代において、いま本当にデザイナーがつくっているデザインは人の心を動かすのだろうかという大きな意識としてあって。DESIGNTIDEの「TIDE」は潮流という意味なのですが、いまつくるべき潮流、もしくは我々が感じるべき潮流はどこにあるのかというところをしっかり一緒に考えていけるような場をつくりたいということで、色んなアーティストやデザイナーを呼んで今回場を形成しているというところですね。
原田:今回参加されているのは、日本のデザイナーはもちろんですが、色々な国から来られていて、メインの展示には32組が出展されるそうですが、これはどういうプロセスで選ばれた面々になるのでしょうか?
武田:今回ディレクターが6人います。佐藤拓というPARCELというアートギャラリーのディレクター、E&Yという松澤さんの会社で働いている秋本(裕史)さんという2人の日本人がいて、それ以外の4人は海外ベースの方たちです。DezeenのMax Fraserさん、Sight UnseenのというUSのメディアの Jill SingerさんとMonica Khemsurovさん、アーティストのスズキユウリさんというロンドンベースで活動してらっしゃる方で、グローバルな視点を持っている方々です。
DESIGNTIDEに向けて制作するプロダクトについてのプロポーザルを皆さんからいただき、6人のディレクターが自分の持ち点を割り振って、本当に上から20人、25人という形で選んでいきました。これは大きな課題だと思うのですが、そうするとジェンダーバランスが非常に悪くなるという課題があって、一部女性の作家さんに再度募集をかけて追加して、現在の構成になりました。
原田:選ばれている面々を見ると、「デザインの手前」にも出て頂いたwe+も出ていたり、誰もが知るような国内の著名なデザイナーから、まだあまり名が表に出ていない若い方までかなり多彩な面々になっていますよね。
山田:もちろん若い人が多いという印象はあるのですが、一方で若い人にこだわるというのもちょっとナンセンスな部分があるから、時代をつくっているデザイナーたちをピックアップするという意味で、経験とキャリアのある人も入っている印象があって、それがデザインシーンをちゃんと見据えたと意味で良いのかなと。
武田:年齢については、実は35歳以下の方を基本的には押し出したいというのがあって、ブースの出展料についても35歳以下の方で希望がある場合は、提案内容に応じて割引するということもやっています。とはいえ、35歳以下を何枠にしようとかそういうことは一切なく、本当に(上から)順番で決めていきました。僕としては、思った以上にベテランの方が多いなという印象は正直受けました。
ただ、僕1票も持っていないですし(笑)、コンテンツのことは何も言わないので。あと意外に思ったのが、日本人よりも保守的な決断をするのがむしろ海外のメディアの方々だったりして、これはプロダクトに結実するのか怪しいという理由で、面白いコンセプトでも形になるのかわからないものをことごとく切っていくんですよ。どちらかというと日本の方が保守的だと思っていたらそんなことはなくて、比較的そういう人たちがベテランをしっかり推してきたという印象を受けています。
「エゴ」と「身体性」がテーマの特別展示
原田:今回はメイン展示の他にもいくつかプログラムがあると思うのですが、スペシャルエキシビションというのはどういったものになるのでしょうか?
武田:メインエキジビションが基本的にはこれまでのDESIGNTIDEがつくってきたブランドや、プロダクトデザインの歴史に対してリスペクトを持ち、DESIGNTIDEがこれまでにやってきた形式で選定していくということを大切にしている一方で、スペシャルエキジビションについては、もう少し恣意的に事務局としていま思っていることを伝えていこうという意識があります。具体的には、エゴというのをひとつの大きなテーマにしていて、自分がつくりたいものに純粋に向き合っているのかということだったり、もうひとつは身体性というものをテーマにしていて、身体を通したデザインのあり方について考える機会を提供したいというのがあります。キュレーターに太田琢人さんという若いプロダクトデザイナー、アーティストを据えて、彼と一緒に8人の若手、基本的には1990年代以降生まれの作家を中心に展示をつくるということをしています。
原田:今回のDESIGNTIDEでは、サステナビリティや社会課題と向き合う視点というものが、参加されるデザイナーや組まれているトークプログラム、会場のデザインなどに反映されている気がします。これらを制約と捉えるかどうかは人それぞれだと思いますが。なかなかやりたいことをやるだけでは難しい状況がいまのデザインの世界にある中で、そういう部分とは少し離れたようなクリエーションというものも見られるのではないかなと期待しています。
武田:その通りだと思います。多分デザイン業界の方が見ると、「これはアートなの?」といった気持ちになると思うのですが、太田琢人といういうキュレーターは、一見アートピースだけど、極めてデザイン的な思考からつくるということをする人なので、他の作家についてもアートピースの中から鋭いデザイン思考が感じられるのではないかと思います。
原田:あとはトークプログラムですね。
武田:はい。トークは計10本あります。こちらも比較的既存のデザインイベントとは少し違うような形で、デザインとはあまり関係ないような方、例えば孫泰蔵さんだったり、もう少しアート寄りの方だったり、そういう人たちを招きながら、デザインだけではなく、その周辺にあるものだったり、デザインとアートの関係あるいはデザインとさまざまな社会の関係みたいなことを紐解いていくようなプログラムをつくっています。
原田:あともうひとつ、マーケットというものがあるようですね。
武田:アートのイベントをやっている中で大きく違うと思うのは、デザインというのは比較的簡単に購入ができるというところです。それがオーディエンスがデザインというものに接したり、当事者として体験したりしていくということのひとつだと思っていて、それがまったくないというのは少し寂しいかなというのがあって、今回マーケットをつくっています。ただ、いわゆるグッズ屋さんでは全然なくて、作家さんがつくっているプロトタイプだったり、ピッカピカの完璧なプロダクトではない、その一歩手前のものを実際に購入して感じていただけるようなことを目指して設定しています。同時に、twelvebooksという人たちと一緒にデザインやアート、クリエイティブにまつわる書籍を選んで販売していくということをする予定です。
原田:DESIGNTIDE TOKYO 2024は、いまお話しいただいたメインエキシビションとスペシャルエキシビション、トークとマーケットという4つが柱となり、11月27日から12月1日まで計5日間、日本橋三井ホールで開催されるということです。
プロダクトデザインが抱える課題
原田:武田さんはこれまでデザインの業界とほとんど関わりがなかったのかなと思うんですね。今回はディレクター陣もデザインのど真ん中ではない方もいるとはいえ、基本的にはデザインのプロフェッショナルの方々とつくっていくというところだったと思うのですが、進めていく上での齟齬やぶつかり合いとか、何かそういうのはあったのかなということもちょっと聞いてみたくて。
武田:やっぱり熱量が強い分、ぶつかることも結構あったのかなという気はしますね。もともとDESIGNTIDEが持っている趣味性みたいなものですね。シュッとした、考え抜かれたデザインみたいなものをブランドを引き継ぐ上で強く意識しなくてはいけない中で、ある意味そこに限界が見えてきたからこそ次の潮流を起こさないといけないというところがあると思うので、その部分で意見が食い違うこともあったし、その中でもみんなやっているという感じではありますね。
原田:どんな業界でもその中で研ぎ澄まされていく部分は当然ある一方で、どうしても閉じられていくと自家中毒的になってしまったり、業界の中でさらにタコツボ化してくような状況は色んな業界で起こり得ることだと思うんですね。冒頭にもお話しいただいたように武田さんはアートや食の業界、GAKUという中高生向けのスクールをやられているというところで教育の世界とか、色々な領域を俯瞰的に見ている印象があるのですが、その中で今回デザインの業界やシーンに関わるようになって感じることはありますか?
武田:やっぱり正直な話、凄い硬さは感じますよね(笑)。それはGAKUでも、プロダクトデザインの授業が一番翼自体をもがれているというか、子どもの発想力みたいなものだけでどうにかならない部分というのが強くあるなという印象があります。それは、プロダクトデザインというものがしっかりモノを細部までデザインしなきゃいけいないということとともに、建築よりは身近で現実的であり、かつやっぱり非常に強く企業や商業と結びついているということもあって、なかなかクリエイティブだけでいいよという空気は非常に少ない業界なのかなという印象は受けますね。
プロダクトやインテリアの領域というのは、非常に若い人が出にくい状況だなというのを思っていて、やっぱりプロトタイプをつくるのにもお金がかかるし。ちょっとインテリアを直そうとしたら何千万円かかってそれがミニマムだという時に、新しいアイデアよりもどうしても実績を優先したくなってしまう感覚というのは極めて真っ当なものだと思うんですよ。それは結構日本においては根深い問題で、お金を出す発注者の問題もあるだろうし、やっぱり模倣することに対してネガティブな印象をあまり抱かない国民性と言いますかね。吉野家の次に松屋が出てきてすき家が出てきても、「私、すき家派!◯◯派!」となってしまう国。模倣することに対してあまりネガティブな印象を抱かないところがあったりする中で、インテリアやプロダクトの若い才能を世の中に押し出すということは非常に難しいことだなと感じています。そこに業界の全員が気づいて、相当アファーマティブにやっていかないとこの国の若いデザインシーンというのは育たないということで、それはプロダクトデザインが特別悪いということではなくて、プロダクトやインテリアというデザインの特徴上、それは他の業界よりもはるかに実績が重視されやすいことを認識して、みんながそれに対して向かっていかないとどうにもならないんじゃないのかなという印象はやっぱりありますね。
そのためには少なくとも若い才能が自分のプロトタイプを見せる場はなくてはいけないだろうし、発注を握ってる人たちが一回りぐらい若返って、若い感性みたいなものを理解できるようにならないとちょっとマズイんじゃないかなという気がしますけどね。
山田:冒頭で原田さんから説明があったように、DESIGINTIDEというのは、もともと東京デザイナーズブロックというものがあって、まったくの前身というわけではないですが、ある種デザイナーズブロックが持っている哲学を受け継いで始まったイベントだったと記憶しています。デザイナーズブロックもDESIGNTIDEも、東京デザイナーズウィークに対するある種のオルタナティブみたいなところで動いていたところがあって、コマーシャルなものは割とデザイナーズウィークの方にいって、オルタナティブなものがDESIGNTIDEの方に行っていたような記憶があるんですね。
オルタナティブというのはそもそも何なんだ? というところで、本質的にオルタナティブということよりは、もっと新しい可能性が切り開かれていくことが重要なのであって、いま武田さんが仰っているようなことはまさにそこの部分の課題だよなと。20年、30年経ってもそこが日本では全く改善されないというところもある一方で、どうしても経済的な合理性に結びつきやすい。産業なのでどうしてもそうなるのですが、ご自身の活動の中でそこに対する打開策、具体的なところでもちろん活動を続けていくということがひとつの打開だと思うのですが、何か他でお考えの部分というのがあれば、お聞かせいただけないでしょうか。
武田:これは僕がアート業界に対しても思っていることなんですが、経済的価値だけで言った時に、論理的に説明できないことだとすると。みんなそこで諦めるんすよね。俺はクリエイティブだから、経済業界のヤツには理解されないでいいオルタナティブだと。いや、本当に考えていった時には、いまの直近の経済的価値だけを追い求めること、もしくは経済的価値に対して安定的なものですよね。実際にはどんどん同じ建築家のものが建っていったら、後ろの方というのは別に注目されなくなっていくというのは経済的にも別に合理的ではないのですが、ただ意思決定として経済的に合理的でありそうなことに対して、実はその経済合理性がないかもしれないと思っているオルタナティブの側がその価値を言語化し、その価値に対して企業に説明をしているのかと言ったら全然してないんですよ。「オレたちオルタナティブだから」「別にビジネスの外だから」みたいな空気。それがもう致命的にダサいなと思っていて。「いやいやいや」と。「本気に信じているんだろう?」と。そのオルタナティブの価値を。だったらそれを言語化して、それを社会に実装するための努力をしないと。その努力をするのは別にクリエイターではなくて、僕みたいな立場の人間だと思うんですよ。僕自身それをしなきゃいけないと強く思っているし、クリエイターじゃなくて、その周りでクリエイターの作品を世界にインストールしようとする人、仲介となる人たちはそこに対して強い意識を持って、自分たちが言語化してアピールしなかったら完全に資本主義的論理に全部巻き取られるんだぞという危機感のもとで動き続けないとダメなんじゃないかなというのを僕は思っていて。純粋に自分たちの努力不足というか、そういう印象を受けていますけどね。
コミュニティはイベントではつくれない
原田:プレイヤーではない立場としてそういう場やコミュニティをつくることは凄い大事だなと思っていて、武田さんが今回DESIGNTIDEで取り組まれていることもそういう場になっているのかなと感じます。そういったコミュニティをつくっていくことでその先に期待されることや、思い描いていることというのはどういうものなのですか?
武田:やっぱり「目」ですよね。隣の人と勝負している感覚になると、どうしても凄い近いところを見ちゃうんですよね。でも、コミュニティとか業界ということを何となく近くに感じていると、自分が社会にどう接続しているのか、海外にどう接続しているのかということを、自分がコミュニティの束として生きている時というのは結構感じられたりするんですよ。
プロダクトデザインというのはあまり大きなコミュニティではない中で、その重要性というのは「社会」とか「グローバル」といった単位を身近に感じるためにあるものという感覚ですかね。
原田:そのコミュニティ自体も同質性が高すぎるコミュニティと、全員が知っている人ではなく、知らない人もいるようなコミュニティでは、コミュニティの質やコミュニケーションのあり方が変わるのかなっていう気がします。冒頭に出たEASTEAST_TOKYOというのは、そういう意味ではいわゆるファインアートど真ん中のコミュニティではなく、色々な人が混ざり合っている場というのがこれまでのアートイベントと一線を画していたところなのかなという気がしています。あまりにも純度が高すぎるコミュニティというのは、それはそれで内に閉じていってしまう要素にもなりかねないですよね。
武田:うーん、難しいですよね。コミュニティというのはイベントによって生まれるものでは絶対にないと僕は思っているんですよ。そういう意味で言うと、EASTEAST_でやったことというのは、コロナにも負けずずっと活動してきたコミュニティ同士を、正直言うと仲良くないものを横に並べてみるということなんですよね。「隣りのヤツより俺はカッコ良くなきゃいけない」というある種の緊張感をコミュニティごとに持っているし、同じ場所を共有することで、「なんかよくわからない」「嫌い」という気落ちが、「あれ、コイツ意外といいヤツかもな」となったり、コミュニティの単位は変わらないんだけど、そこに越境が生まれるということを目指していました。
やっぱりコミュニティというのは日々積み重ねていかないと強固なものにはならないので、イベントで生み出すものでは全然なくて。普段からあるコミュニティがどういうものであるかということで、今回のDESIGNTIDEでもそうですけど、やっぱり流派とか、好き嫌いとか、それこそ出身大学とかである程度コミュニティというのはできていると。それぞれが別に仲が悪いという印象も正直あまり受けていないですし、これはこれでいいんじゃないかと。なんだけど、もうちょっと大きい単位で自分を見ないと難しいだろうなと。もう日本の中で何流派もやっているような余裕はないんじゃないのというのが、この国のあらゆるクリエイティブに対して言えることですけど。日本の中で席次争いをしているような感じではもうないんじゃないかという時に、年に1回くらい色んな人たちの考え方を集めて一つのコミュニティだという捉え方をして、世界や社会に接続していくという印象を、なんとなくその手探り感を自分の中で持ってほしいなという気持ちではありますね。
原田:今日はDESIGNTIDE TOKYOの主催者の一人である武田悠太さんにお越しいただきました。DESINTIDE TOKYOは11月27日から12月1日まで、日本橋三井ホールで開催されます。チケットの購入が必要になりますので、Peatixをチェックしてみてください。
お知らせが最後になってしまいましたが、今回のDESIGNTIDEには「デザインの手前」も参加させていただきます。今回僕らは「サステナビリティ」や「リジェネラティブ」といったテーマのもと、DESIGNTIDEに出品されているデザイナー3組をお呼びして、公開収録という形でお話を伺う予定です。
11月30日午前11時から2時間くらいの枠で行う予定ですので、こちらもよろしければお越しください。登壇されるのは、テキスタイルデザイナーの光井花さん、空間やプロダクトのデザインを中心に手がけられている高田陸央さん、そして3人組のデザインチームであるAATISMOの3組で、いずれも30代以下の若いデザイナーの方々なので、若い世代のそれこそ潮流というか、その辺のお話を聞けるんじゃないかなと期待をしております。
武田さん、今日はありがとうございました。
武田:ありがとうございました。
原田:イベントの方もよろしくお願いします。
武田:よろしくお願いします。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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