創作やデザインの「作為」はどこから生まれるのか? | 𠮷田勝信さん×狩野佑真さん 〈1/4〉
「デザインの手前」は、デザインに関わる編集者2人が、さまざまなクリエイターをお招きし、デザインの本質的な価値や可能性についてお話しするトークプログラム。ニュースレターでは、最新エピソードの内容をテキスト化してお届けしています。今週からのゲストは、グラフィックデザイナーの𠮷田勝信さんとデザイナーの狩野佑真さん。初回では、デザイン、採集、超特殊印刷を活動領域とする𠮷田さんの活動にフォーカスします。
共通点が多い2人のデザイナー
原田:今週からまた新しいシリーズがスタートします。今回は、「デザインの手前」初の出張収録という形で、いま僕らは山形県に来ています。山形県の大江町を拠点に活動されているデザイナーの方と、僕たちと一緒に東京から来てくださったデザイナーのおふたりが今回からのゲストになります。
まずは、この場所を拠点にされている採集者・デザイナー・プリンターの𠮷田勝信さんです。𠮷田さん、よろしくお願いします。
𠮷田:よろしくお願いします。
原田:そして、この山形まで一緒に来てくださったのが、デザイナーの狩野佑真さんです。狩野さん、よろしくお願いします。
狩野:よろしくお願いします。
山田:今日は𠮷田さんのアトリエにお邪魔していますが、アトリエだけでもワクワクするような空間ですね。
原田:アフガニスタンの色々な道具などが置かれていましたよね。噂は色々なところから聞いていたのですが、初めて来ることができて嬉しい限りです。
ちなみにおふたりは、これまで面識はあったのですか?
𠮷田:『ゴミうんち展』か。
狩野:そうですね。21_21 DESIGN SIGHTで昨年秋から今年の2月くらいまでやっていた企画展で、たまたま隣の場所でしたね。
原田:おふたりは世代も近いですよね。
𠮷田:僕が1987年生まれです。
狩野:1988年生まれです。ほぼ一緒ですね。
𠮷田:同じ学年かもしれない。
原田:今回、なぜこの領域の違うおふたりのデザイナーなのかという話も少ししておこうかなと思います。
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山田:僕たちも2人でよく編集会議をしているのですが、素材に対して独特のアプローチをしているデザイナーを取り上げたいという話をずっとしていました。もうひとつには、表現の異なるおふたりに出ていただきたかったということがあります。𠮷田さんは印刷物という形で表現されていて、狩野さんはプロダクトとして形にされている。アウトプットは違えど、おふたりの中には共鳴できる考え方や、同時に異なる部分も多くあると思います。そのあたりを今回のトークの中で掘り下げていけたらと思っています。

原田:最初はマテリアルという観点から、おふたりに色々話を伺えるのではと思っていましたが、見ていくと他にも色々共通点があるなと感じました。先ほどご紹介したように、𠮷田さんは採集を普段からされていて、狩野さんも森の中に入って素材を集めたりしています。たとえば「Rust Harvest」というサビを“収穫”して作品をつくるプロジェクトがありますが、採集と概念の点で通じるものがあると思いました。 「Rust Harvest」では、サビをアクリルに圧着させるんでしたっけ?
狩野:サビだけを転写させるというものですね。
原田:そうした独自の技術を開発されているところは、このアトリエにもあるように、印刷や製本などの技術を自ら開発しながら制作している吉田さんとも共通していると感じます。 さらに、おふたりとも継続的に取り組んでいるプロジェクトを発展させながら、他のプロジェクトへとつなげていくスタイルを取られていて、ジャンルは異なっても共通する部分が多い。
𠮷田さんは山や海から顔料を採取されていて、自然と人為のあいだでものづくりをされていたり、見れば見るほど共通点が多いと思いました。このおふたりにお話しいただくと面白い対話になるのではないかと。
本当はオンラインか、𠮷田さんが東京にいらっしゃる時に収録ができればと思っていたのですが、タイミングが合わず、勢い余って来てしまいました(笑)。
𠮷田:すいません。ありがとうございます。
山田:みんな心の中で、𠮷田さんのアトリエを一度見てみたかったというモチベーションが大きかったんです。ただ、狩野さんを付き合わせるわけにはいかないなと思っていたら、ご本人の方から行きましょうと言ってくださって。こちらからお願いしなくてもいいんだ、と(笑)。
原田:僕らが逆に背中を押されましたね。
狩野:やっぱり来て見てみないと思って(笑)。
𠮷田:ありがとうございます(笑)。
山田:結果的に凄く良かったなと思っています。おふたりともこの時代において物理的に手が汚れる仕事をされているところも大きな共通点かなと僕は思っています。
原田:ということで、ここから4回にわたってこのおふたりとお届けしていきます。まず1回目では、主に𠮷田さんの活動について色々お伺いしていきたいと思います。そして2回目では狩野さんの活動にフォーカスしてお話を伺い、3、4回目でクロストークをしていけたらと考えています。
大学時代に実感したデザインの面白さ
原田:まずはじめに、𠮷田さんのプロフィールをご紹介します。𠮷田勝信さんは1987年、東京生まれの採集者・デザイナー・プリンターです。幼少期は奄美大島で育ち、その後、仙台での生活を経て、東北芸術工科大学への入学と同時に山形へ移られました。
現在は、採集・デザイン・超特殊印刷を主な領域とする「𠮷勝制作所」の代表として、山形県を拠点にフィールドワークやプロトタイピングを取り入れた制作を行っています。
2020年からは、海や山から採集した素材で色をつくり、現代社会に実装することを目的としたプロジェクト「Foraged Colors」にも取り組んでいます。 そして、ご趣味はキノコの採集および同定とのことです。
ということで、今週はこの𠮷田さんと一緒にお届けしていきたいと思います。よろしくお願いします。
𠮷田:お願いします。
山田:お願いします。

原田:先ほども少しお話ししましたが、𠮷田さんは東北芸術工科大学のご出身ですよね。でも、もともとはデザインを目指していたわけではないんですよね。
𠮷田:そうですね。学生の頃は文化財の保存修復を学んでいたので、どちらかというと仏像や絵画を「描く」とか「つくる」よりも、「直す」方ですね。
原田:そうしたバックグラウンドや、人類学的な視点でものづくりを捉えていらっしゃる点が、多くのデザイナーとはかなり違っていて、とてもユニークだなという印象をずっと持っていました。そんな𠮷田さんのデザインとの出会いや、デザインをどのように捉えて活動されているのか、そのあたりの吉田さんのデザイン観を伺いたいなと。
𠮷田:僕が初めてデザインが面白いなと思ったのは、学生の頃でした。ちょうど地域芸術祭のようなものが各地で立ち上がり始めていて、大きなものでいえば2回目の開催ぐらい。1回目が成功して、これからどんどんいくぞという空気があった時代です。だいたい2006年から2010年の間ですね。
その頃に国もその流れに影響を受けていて、文部科学省などが補助金を出すようになり、僕の通っていた大学もその採択を受けました。大学としては、その予算を先生ごとに振り分けて、地域活動をしなさいという方針を出したんです。そうすると、先生ごとに学生を何人か引き連れて、山形県中の地域へ学生を放し飼いにするような活動が増えていきました。僕の学科はもともとあまり制作をする学科ではなかったのですが、その活動が面白そうだと思って紛れ込みました。
ここの隣町の朝日町という市町村が初めてのフィールドだったのですが、そこで廃校を使った展覧会を開催することになりました。その際に広告物を誰がつくるかという話になり、たまたま大学入学時に買ったパソコンにクリエイティブ系のアプリケーションが入っていて、それを触るのが楽しかったので、じゃあ自分がつくります、と。
2006~2007年頃だったので、いまのようにスマートフォンで住所を入力して車で来るような感じではなく、まだ地図が頼りになる時代でした。アクセス情報も文字で「自家用車の場合は何号線をどれくらい走って…」というように書く必要があって、その情報づくりが非常に重要だったんです。
だからこそ、その廃校にどうやって来てもらうかという点で、僕がデザインした地図やアクセス情報が来客数に直接影響するわけです。実際に自分がつくった地図を頼りに人が廃校まで来てくれた。そもそも「到達できた」ということが、「伝わっている」という話なので、その実感が最初の体験としては大きかったですね。
山田:まさか𠮷田さんのスタートが、インフォグラフィックスではないですが、情報としてのグラフィックデザインが持つ超王道的な要素からスタートしたというのは結構面白いですね。
民俗学的なデザインのアプローチ
原田:𠮷田さんのデザインの特徴のひとつとして、民俗学的とか文化人類学的といった、物事の起源に立ち返ってみるという視点や、土地と人との関係性を見つめるようなアプローチがあると思います。
実際に手がけているお仕事の中でも、コーヒーの起源に立ち返ってみるとか、ワインの起源を探ってみるとか、そうした取り組みが多い印象があります。その結果として生まれてくるアウトプットは、どこか時代性がわからないようなものになっているというか。こうしたスタイルはどういうきっかけで生まれたものなのか、このスタイルの持つ可能性や、そこからできることについてどのように捉えていらっしゃいますか?
𠮷田:民俗学に最初に興味を持ち始めたのは、僕が通っていた大学に「東北文化研究センター」という民俗学のラボが併設されていたのがきっかけでした。そこで学生と一緒にフィールドワークに出かけて、初めて聞き書き的な取材の作法を教わりました。
実際にそれをやってみると、集落の方々、つまり山形に暮らしている人たちが、どんなバックボーンを持ち、生業がどうだったかとか、この川は歴史的にどう使われていたのか、なぜ家がこの形なのかといったことがなんとなくわかってくる。最初は全然わからなかったのですが、戻ってから文献を読んだり調べたりして、もう一度訪ねてみると「お前よく知ってるな」とか「さすが大学生だ」と喜んでくれる。それが単純に嬉しかったんです。
そういう経験から始まって、要は同じようなことをクライアントにもしているんです。つまり、クライアントの職種や業種について、事前に文献調査などをしてから打ち合わせに参加するんです。そうすると、経済的な部分までは理解できなくても、その職業の流れや成り立ちを知ることで全体の解像度が上がるんです。
その手法を自分の制作、グラフィックワークにも取り入れ始めたのは、比較的最近のことです。近年は博物館などのデジタルアーカイブが盛んになってきたので、クライアントの職種や製品に関するキーワードを検索に打ち込むと、関連する図像や文献が大量に出てくる。そうした画像を見ていくと、ヴィジュアル的にさまざまな時代の要素を検索できて、それが割と面白いんです。
最近は、それらの画像をリスト化してクライアントに見せ、この中で好きなものはどれですか、と尋ねています。例えば、シンボルマークをつくる時なら、どんな感じのものが良いのか丸をつけてもらうようなことをすると、なんとなく方向性が見えてくるんです。その上で自分なりに再生成していくというのが最近でき上がってきたやり方ですかね。
学問的に読解を行ってくれているものが多数あるので、客観的にクライアントを理解するのに役立つ部分もあります。ただ、それだけではそのクライアント個人の変遷や内面的な部分は見えてこない。そこは直接自分で聞いて、クライアントの仕事の文化史と個人の話、そしてそれを自分がどう理解するかという3つくらいが出てくると、図像が比較してつくりやすくなるところがあるんです。
山田:いまのお話を聞いていて思ったのですが、山形は採集の文化というか、例えば、柳宗悦や柳宗理、シャルロット・ペリアン、今和次郎、言ってみれば柳田国男もそうかと思いますが、いろんなものが混然一体となって採取されたものが文化としていまの私たちの生活にまで根付いている部分が多い。
実際、今和次郎もこの辺りで生活文化の調査を行っていて、文献も多数残しています。そう考えると、生活の「採集」という行為も𠮷田さんの活動の中にも自然に根付いているのかなと感じながらお聞きしていました。
𠮷田:そうですね。僕が工業や産業、工芸というよりも、自然環境や民俗文化みたいなものに近いのは、おそらく山形というところが割とそれらを目にしやすい場所だからだと思います。それはたしかにありますね。
印刷の側からデザインを眺める
原田:印刷のお話を聞いていきたいと思うのですが、グラフィックデザインの中で印刷はもちろん工程のひとつとしてあるわけですが、基本的に多くのグラフィックデザイナーは、既存のインフラとして印刷を捉えている部分が大きいと思います。一方で𠮷田さんの場合は、もっと何かを製造をするという大きな工程の中で、デザインや設計をする部分と、印刷・製本を行う部分が地続きでつながっている印象があります。𠮷田さんにとって、そもそも印刷を追求していく背景にはどんな考えがあったのでしょうか?
𠮷田:大江町に同い年の大学の同級生がいたんですよ。彼は建築出身で、その後宮大工を経て、いまはフリーランスの大工として働いています。彼がなんで大工をやっているのかという話をよくするのですが、建築物のクレジットに大工さんの名前が載ることはかなり珍しいんですよね。
建築デザインの領域においては、基本的にひとつの技術として大工さんは見られています。実際には、平面のプランを現実世界で立ち上げていく過程で、大工として現場での試行錯誤は必ずあるはずなのに、それがクレジットから抜け落ちることはどうなのかという問題意識が彼にはあって、現場から建築をもう一度見たいという考え方で大工をやっているんです。
その構図がそのままグラフィックデザインにおいては印刷の話に置き換えられるんですよ。グラフィックデザイン領域においては、印刷所の名前は載ることがあっても、印刷の職人さんの名前が載ることはかなり稀じゃないですか。それはどういうことなんだろうと考えた時期があって、それで印刷をやってみたいなと。一番下から上の方を眺めてみたいと言うのが基本的な欲求としてあってやり始めたんですよね。
印刷を実際にやってみると、印刷には製造ラインというか製造の経路があって、その中にデザインというものが合流してくるわけですよね。デザインはPC上で制作したものをデータ入稿して、それが製版部に入稿されてくるわけなのですが、印刷の現場で仕事をしていると、デザインという行為自体が製版部で行われている何かというくらいで、全体の印刷工程の中ではごく一部分でしかないことがわかってくるんです。
紙の発注、インクの調合や発注、印刷機のメンテナンス、製版など色々さまざまな手順があると思うのですが、そのごく一部分にしかデザインは関与していない。
印刷という大きな製造形態の中で、デザインは非常に限られた領域なんだということがわかってきました。だからこそ、製版部分の前後や、製版そのものを少し改変するだけでもデザインに変化が生まれるんじゃないか。そういったことを現場に入って体感するうちに、次第にそう思うようになっていきました。
原田:一般的にデザイナーの仕事は入稿した時点である程度完了というか、もちろん色校などもありますが、印刷はデザインの出口にあるものと捉えられていることが多いと思うんです。でも𠮷田さんの場合は、印刷の現場までご自身で担っていて、その流れの中で今度はインクそのものにも目を向けるようになって、現在は「Foraged Colors」というプロジェクトを手がけられていますよね。
このプロジェクトは、そもそもどんなタイミングで始まり、いまどのような段階まで進んでいるのかについてもお聞かせください。
𠮷田:これはたしか3年から5年くらい前に始めたプロジェクトで、僕が印刷所をつくってすぐぐらいだったと思います。母親が草木染めをやっていて、母の草木染めや機織りの技術をどう継承していくのかという問題が一応あって、凄く個人的な話なのですが、単純にもったいないなとという話もありつつ。また、両親の仕事をどう引き継ぐのかということが自分の仕事にも影響した方が面白そうだなということもありました。
そこで、草木染めとデザインの間にあるものを考えると、色の話になってくるだろうと。そこから、インクを自分でつくれたら面白いんじゃないかという発想が出てきて、インクをつくる諸要素を調べ始めたんです。それは顔料とメディウムという話なので、草木染めだから顔料だろうということで、染料を顔料に変換する技術の研究を始めました。
主に母親が技術を持っているので、彼女が率先してやってくれてはいたのですが、要はどうすれば染料を顔料に化学変化させられるかという化学的な話ですよね。そのファクター出しみたいなことをずっとしていって、ファクターが揃うと、技術を体系化してコントロールできるようになるので、コントロールするようなマニュアルや仕組みをつくっていくということですよね。
それぞれの土地ごとに顔料製造所みたいなものができたら面白いなと思っていて。例えばこの辺は広葉樹が多いのですが、どの地域にもその土地ならではの植物や生物があって、そこから取れるものを色にしていく。珍しい植物を探し始めると途方もない話になっていくので、むしろたくさん採れるものを使って色をつくる。各地でそれができると、その土地の産業や生態系の特性が反映された色が生まれるはずです。
もしそれで印刷ができるようになったとしたら、「今回は写真のブルーを少し抜け感のある色にしたいから、沖縄の琉球藍で印刷しよう」とか、台湾や中国などで印刷したりとか、そういうことも有り得る話なので。そういう構想を念頭に置きながら進めてはいるのですが、まだそれが単なるロマンに留まるのか、本当に実現できるのかはまだちょっと見えてはいないのですが。
外的要因から生まれるオリジナリティ
原田:インク自体を研究したり、印刷を自分でやってみたりと、ある種技術を分解しながら理解していくようなことをずっと続けていらっしゃいますよね。そうした周辺のことを見ていくことが、実際につくるものに対して、どのようなフィードバックをもたらしていると感じますか?
𠮷田:そうですね。ひとつ念頭にあった問題として、デザインにおける作為性みたいな話があるかなと思っています。人がものをつくる以上、こうしてやろうという意図が生まれますよね。ただ、印刷のように機械的な運動によって製造物が生まれる場合、そこに変に人為的な介入があると機械がエラーを起こして失敗するんですよね。その論理からいくと、人為みたいなものはむしろない方がスムーズにいく。
制作物やデザインにおける作為性をどう扱ったらいいのかという問題が僕の中ではあるのですが、印刷や採集をしていると制作の外側を扱うことになる。制作の外側から攻めていくと、中心に何か出来上がってくるかもしれないという感覚があるんです。
僕はよく「構造」という言葉を使うんですが、素材や製造工程そのものを「構造」と捉えた時に、その構造のファクターをいじっていく、あるいは構造自体をデザインしていくみたいな話になると、最終成果物に僕が触れなくても、要は生成されていくというか。ウェブの世界の自動生成のようなニュアンスで、実際の世界においても製造物が生成されていくみたいなこともあり得るんじゃないかと。
原田:なかなかそこは難しい話ですよね。デザイナーにおける個の存在がどうなるのかという部分にも直結する話だと思いますし、翻っていまの生成AIの時代においても凄く大きな問いになっているように感じます。
𠮷田:そうですね。僕は郷土玩具が好きでよく集めているのですが、自分の制作物に似ているものという観点で集めているんですよ(笑)。そうやって集まってきたものたちがあって、たとえば三春張子のイノシシのようなものや、インドネシアのベンガルトラのパタパタ人形などがあります。郷土玩具に登場する動物の意匠の中で毛並みというものがあって、それは全体の姿を表すために描かれているもので、絵付けの中でもかなり大きな割合を占めているんです。
でも、観察してみると意外と丁寧には描かれていない。その理由を考えると、郷土玩具というのは手づくりではあるけれど、量産品でもあるからなんです。一時間のうちにできるだけ多く絵付けした方が工人さんにとっては儲かる。そうした力が働いているんですよね。
僕自身も、そうした毛並みみたいな模様をよくつけていて、2017年か2018年頃に東京の事務所の壁の仕上げ工事をしていた時のことです。すでに壁は立っていたのですが、ただのベニヤなので、あと一時間で何かしら仕上げたいという話になり、友人の大工さんと二人で現場に入っていたのですが、現場にあったペンキとハケで絵を描くことにしたんです。
とはいえ一時間しかないので、具象的な絵やグラフィカルな表現は到底描けないので、とにかく模様で埋めていこうという話になりました。そこで生まれたのが段ボールにあるような短いストロークで、右利きの僕が右から左へ斜めにハケを下ろすと、自然に一本の線が引ける。そのストロークを何度も重ねて面を埋めていったんです。
すると、その模様が先ほどの郷土玩具に描かれた毛並みと同じように見えたんです。極めつけは諏訪で買った縄文土器で、これにも同じような模様が付いていたんです。僕はその模様を「チョンチョン」と呼んでいるのですが、日本の郷土玩具とインドネシアのものだけではなく、縄文土器にまで共通する模様があると気づいた時、非常にビックリしました。

𠮷田:つまり、時代という縦軸が飛んでいくんですよね。縄文土器はおそらく五千年ほど前のものだと思いますが、ちょっと特定していないのでわからないところもありますが、時代の軸もずれるし、平面の軸もずれていく。そう考えると、あと一時間で終わらせなきゃいけないという制約の中で、手早く描くために発生した模様だったとしても、これは一体誰のオリジナリティなのか、という問いが立ち上がってきたんです。
個人の内側に潜んでいるオリジナリティもあるけれど、どちらかというと外的要因というか、筆記具と肉体の問題、支持体の問題、時間的制約や量産の必要性など、どちらかというとモチベーションや外的要因によって発現するオリジナリティというものがあるんじゃないかと思い、構造というものを考えるようになりました。
山田:小鹿田焼の飛び鉋とか同じような感じですよね。
𠮷田:ああ、そうですね。まさにあれも、機械的というか。
山田:作為なのか無作為なのか。ある種の作為はあるけれど、その作為を超えた作為というか、そこにある構造というか。
原田:生成AIというのもある種、人為の普遍的な部分が浮かび上がってくるものだと思います。これまでデザインは、どちらかというといかに差異化するか、他と違うものをつくるかという方向で発展してきました。けれど、いまのように無限のデータの中から普遍的なものがあぶり出されてきた時に、どうやっていままでと違うものを生み出すのかという話になってくると、もしかすると𠮷田さんがおっしゃっていた創作の前後の仕組みや構造に手を入れることで、自然とこれまでとは違うものが浮かび上がってくるのかもしれない。そうした感性が、これからのデザインにおいても大事になってくるような気がします。
それはもしかすると、AIにおけるプロンプトにも近いのかもしれませんが、前提条件をどう設計するのか、そしてそこから出てきたものをどう判断していくのか。そうした感性が、これからのデザインにおける重要になっていくように思います。
今日はここまで𠮷田勝信さんの活動について色々お話を伺ってきました。𠮷田さん、ありがとうございました。
𠮷田:ありがとうございます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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