「わかる」と「つくる」 〜世界とのズレを埋める2つの方法 | Takram・緒方壽人さん〈1〉
「デザインの手前」は、デザインに関わる編集者2人がさまざまなゲストとともにデザインの本質的な価値や可能性についてお話しするトークプログラム。ニュースレターでは最新エピソードの内容をテキスト化してお届けしています。今週からはTakramのメンバーが週替りで登場。本業とは別に行っている個人活動や、組織と個人の関係などをテーマにお話を伺っていきます。トップバッターはデザインエンジニアの緒方壽人さんです。
デザインエンジニアとしての仕事
原田:今週からデザインイノベーションファーム・Takramの皆さんにご登場いただきます。Takramはさまざまな分野のプロフェッショナルが集まり、ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ=BTCのスキルをかけ合わせて、さまざまな企業や組織のプロダクトやサービス、ブランド、事業創出までをサポートしているデザインイノベーションファームです。今日僕らが伺っている東京のほか、ロンドン、ニューヨーク、上海にも拠点を持ちグローバルに活躍していて、およそ60名ぐらいの組織だと伺っています。
Takramのメンバーはそれぞれメディアなどでお見受けする機会も多いですし、書籍、ポッドキャスト、デザインフェスティバル、ニュースレターなどを通じて積極的に発信をされていたり、大学で教鞭をとられている方もいらっしゃいます。これもひとつのデザインの「手前」と言えると思うのですが、本業とは異なる課外活動的なものにどのようなスタンスで取り組んでいらっしゃるのか、組織と個人の関係はどうなっているのかというところに興味があり、Takramの中でそうした活動をされている方々に週替りで出ていただくという企画にさせていただきました。
山田:60人に出ていただくと1年かかってしまうので(笑)、本当は色んな方にお聞きしたかったのですが、今回は厳選した何名かの方に出ていただくという形になりました。
原田:本日、一人目のメンバーとして出ていただくのは、デザインエンジニアの緒方壽人さんです。緒方さん、よろしくお願いします。
緒方:よろしくお願いします。
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原田:まずはTakramの中で緒方さんがどういった役割を担い、どんな仕事をされているのかなど簡単に自己紹介をお願いできますか。
緒方:僕は、Takramの代表である田川(欣哉)と同じバックグラウンドというか、大学の研究室だけではなく実は高校も偶然同じなんですね(笑)。知り合ったのは大学卒業後なのですが、僕は東大の工学部機械工学科で、田川さんと同じようにプロダクトデザイナーの山中俊治さんの授業を受けてデザインに興味を持ち、この道に入ってきました。
大学を卒業したのは2000年なので、ちょうどインターネットの黎明期でもあり、インターネットやデジタルの領域だったり、メディアアート的なものにも興味があって、IAMASという大学院大学に進学しました。当時はまだ正式な大学院ではなかったんですが、大学卒業後にそこに進み、メディアアートやインターフェースデザインを2年間学びました。その後、山中さんのところで働くようになってプロダクトデザインを学び、そこで田川さんとも数年一緒に働いていたので、兄弟子みたいな感じの存在です(笑)。田川さんは先に独立してTakramをスタートさせて、僕はその後もしばらく山中さんのところで働き、その後一度独立をしました。フリーランスで1、2年やっていた2011年に東日本大震災があり、これからの人生を考えるようになり、また誰かと一緒に何かをやっていきたいという気持ちで田川さんに相談し、Takramに入りました。
大学で機械工学とハードウェアのエンジニアリングを、独学でソフトウェアやデジタル領域を、IAMASでメディアアートを、山中さんのところでプロダクトデザインを学んだという感じで、ハードとソフト、デザインとエンジニアリングを気づけば色々まんべんなくやってきたというのが自分の特徴なのかなと思っています。
原田:具体的にはどういったお仕事をされているのですか?
緒方:デザインエンジニアとしては、メーカーに限らずデジタル領域の新しいプロダクトやサービスを一緒に考えていくということが一つあります。何をつくるべきかも一緒に考えていくようなプロジェクトに入っていく感じです。そうすると、デザインとエンジニアリング的なプロトタイプを同時進行していくことが凄く有効というか、そういう場面が多くなるので、そこで強みを発揮できるというのがあると思います。
僕の場合はIAMASに行っていたこともあり、Takramに入る前からいわゆるメディアアート的な展示などをしていて、未来館やサイエンスミュージアムみたいなところで体験型の展示やインスタレーションをつくるような仕事も結構しています。また、このオフィスの近くにある「ORBIS」というスキンケアブランドのフラッグシップのお店もどこにどんな規模で出店をするのか、何をする場所にするのかというところから一緒に考え、体験設計や店内のサイネージやインスタレーション、グラフィックなども含めて全部やるような仕事をしています。
哲学・思想と技術の間を埋める
原田:緒方さんはデザインエンジニアとして色々なものを「つくる」仕事をされている一方で、本を書かれたりもしていますよね。2019年に共著『情報環世界』を書かれ、その後2021年にBNNから初の単著となる『コンヴィヴィアル・テクノロジー』を出されています。僭越ながら凄く良い本だと思っているのですが、まだ読まれていないリスナーの方に概要を聞かせていただけますか。
緒方:まずタイトルの「コンヴィヴィアル」って何だよ?という話だと思うのですが(笑)、言葉としては「共に生きる」という意味があったり、辞書を引くと「ワイワイ」「賑やかな」「活気がある」「宴会気分」といったちょっと賑やかさがある言葉なんですね。この言葉を思想の中で使っていたのが、イヴァン・イリイチという人で、1970年代くらいに『コンヴィヴィアリティのための道具』という本を書かれていて、訳としては「自立共生」という言葉があてられています。イリイチはこの本の中で道具というものを凄く広く捉えていて、手に取るような道具というよりは、制度やシステム、移動、学校、医療など、そういうものがある種行き過ぎてしまっていて、最初は人間の力を高めてくれたりエンパワーしてくれたり、役立ったりするものかもしれないけど、あらゆる道具が行き過ぎてしまうと人間を依存させたり、思考停止させてしまったり、人間の力を奪ってしまうんじゃないかということを言っています。そうならないような、適度なちょうどいいバランスを取った道具の使い方、道具に使われるのではなく、道具を使わなきゃいけないということが書かれています。それを読んで共感をしたのですが、この本が書かれた50年前から道具というものも変わってきているはずなので、いま考える道具というものを自分なりにアップデートできたらいいかなと思って書いたのが『コンヴィヴィアル・テクノロジー』という本です。人間とテクノロジーがいまどういう関係でいればいいのかみたいなところを考えたという感じです。
原田:イリイチが言う「2つの分水嶺」という話でいうと、いまの時代こそ「2つ目の分水嶺」を越えてしまっているというか、道具に使われている状況がありますよね。それに対して、いまちょうどいい道具は何かということを考えた本だったと思います。もちろん、本の中ではテクノロジーやデザインの話がされていますが、それだけではなく、人と自然、情報、モノなど色んな関係を考えていく本で、それはもはやデザインやテクノロジーという枠を超えて、文明や思想、哲学といったところにまで射程が広がっている。これはデザインエンジニアというよりは、もはやひとりの思想家として書かれているような本だと感じます。ものをつくるということだけではなく、いろんなことを考えて文章にしていくという2つの側面が緒方さんにはあると思うのですが、もともと何かを思索したり、ものを書いたりすることは好きだったのですか?
緒方:ものをつくることは子どもの頃から好きだったのですが、本を凄く読んだり、文章を書くのが好きだったいうことは全然なかったですね。きっかけが何かと振り返ると、野矢茂樹先生という哲学の本を色々書かれている方がいるのですが、大学の時に科学哲学というその先生の授業を教養で取って、それが凄く面白くて影響を受けたんですよね。それまで教科書に載っていることが正しいかどうかということは疑わず、相当受験勉強をがんばったわけですよね。凄く雑に言うと、科学哲学というのは、科学が正しいかどうかということを突き詰めていくと、客観的に「正しい」と言い切ることはできないと。でも、間違っていることは証明ができる。つまり反証ができるということとか、その反証できる可能性を残しておくことが科学的であると。それはポパーという人の思想なんですけど、そうした話を聞いて自分の価値観やものの見方、考え方がガラッと変わったんですね。その辺りから、全然素人ではあるけど、思想や哲学みたいなものに興味を持って本を読むようになりました。そうすると、テクノロジーの話も出てくるわけですが、そこで出てくるテクノロジーの解像度というのがエンジニアの目線からすると、例えばAIのことを語る時などでも凄く荒いなと思うことも正直あったりして。一方で技術というと急に技術書みたいになってしまうところがあって、その溝というか間に空白の地帯があるような感じがしたんです。思想や哲学の人が語れない技術論みたいなことが多少は語れるんじゃないかという気がして、書き始めたというのがありますね。
御代田でつくる自分の暮らし
山田:実は以前に緒方さんの御自宅を取材させていただいたのですが、家の中にある隙間のものを自作されているんですよ。3Dプリンターを使うこともあれば、ノコギリで木を切ってものをつくるみたいなアナログなこともされているのですが、それを見た時にリアルな生活というのを感じたんです。テクノロジーというと急に大上段に構えてしまったり、アレルギーを感じてしまう人もいて、テクノロジーという言葉が独り歩きしてしまう部分があるのですが、そうじゃないんだということが体感として分かると言うか、凄く魅力的な生活だと感じたんです。
緒方:もともと知り合いだった岡部修三さんという建築家の方と話していて凄く共感できたところがあって。一緒に家を設計をしていったのですが、家として建築する部分と、家具を置いていったりする部分があって、先ほどの「思想」と「技術」の間ではないですが、「家具」と「家」の間みたいなところが凄く見えてきたんですね。例えば、僕は自分で作り付けの収納とか網戸をつくっています。もちろんサッシについてくる網戸もあったのですが、これ絶対もっとよくできるよなと。網戸についてきたパーツを使うと1センチくらい隙間が空いちゃうんですよね。アルミでちょっと無骨だし、せっかくきれいな窓なのにと思って分解してみたら、網戸のロールで引っ張ってくるところはさすがにつくれないのでこれを使うとして、フレームはつくれるんじゃないかという感じで、ロールの部分を引っ掛けるパーツは3Dプリンタでつくって、フレーム自体は木を切って組み合わせてつくったんです。自分でつくっているので何回も作り直したりしているんですが、そんなことをやったりしていますね。
原田:緒方さんはいま東京を離れられていて、お住まいが長野県御代田にあるんですよね。
緒方:はい。それもすごく大きいですね。それまで東京に住んでいたんですけど、コロナがきっかけで長野県の御代田町という軽井沢の隣の町にクリエイターの知り合いがたくさん移住し始めていたのもあり、行ってみたら凄く良いところだったので、すぐに土地を探して移住したという感じでしたね。
原田:ある種あらかじめつくられた環境だと言える東京から、暮らしを自分でつくっていくような環境に移られるというのは、それこそ『コンヴィヴィアル・テクノロジー』じゃないですが、ちょうどいい道具やテクノロジーのあり方を考えるひとつの環境にもなりますよね。
緒方:そうですね。イリイチが6つの問いというのを書いていて、その1番目に人間がどんどん自然の環境の中で生きられなくなっているんじゃないかという問いを挙げているんですね。要するに、都市のような人工的な環境の中はどんどん快適になっていくとしても、それがなくなったら生きづらくなっているということになっていないかという問いを投げかけていて、本当にそうだなと。自分の本を書きながら途中でコロナが来て、移住してという感じで、両方が両方に影響し合っているような感じというか、自分で本を書きながら、それに後押しされて移住を決めたという感じだったかなと思いますね。
例えば、いま御代田で米作りを手伝っているのですが、お米をつくるという凄くプリミティブに生きていくための食べる物をつくるという体験をやってみると、凄く色んな発見があるんですよね。今年からちょうど本格的に始めたのですが、まさか最初の年にお米が足りない状況になるとはという感じなのですが(笑)。それだけありがたみを感じるというのもあるし、こういうことは常に起きるかもしれないわけですよね。悲観的になりすぎるのもどうかと思いますが、本当にそういう未来もあるかもしれないじゃないですか。普通に環境の話も食糧難の話もある中で、結構真面目に考えて、本当にそうなった時にとりあえず米をつくる能力とか場を持っているということが本当に必要になるかもしれないというのもあるし、単純につくってみたいという興味もある。そういう感じでやっているわけですが、一方でTakramとしては大きな企業のAIを使った新しいサービスを考えるような仕事をしていて、常にそうした両極端の中で振り子を振っているんです。もし片方だけだとしたら、もしかしたら「AIは敵!」みたいな考え方を持ってしまうかもしれない。なかなかそういう人はいませんが、振り子を振っていることで視野が広く持てるというのはあるのかなと思っています。
山田:実は原田さんは鎌倉にお住まいで、緒方さんは御代田ですが、東京をちょうどいい道具にするためにもそれぞれのスタンスがあるんですよね。その距離感とかには正解はないし、その人のライフスタイルで選んでいくものだと思うんですね。人によっては六本木や青山のど真ん中に住みたいという人もいて。
緒方:そうですよね。逆にそういう選択もあると思います。
原田:たしかに「東京を道具として捉えている」というのは、僕自身には当てはまるかもしれないですね。東京の中にいると、それこそ色々なものが行き過ぎてしまっている中で、自分にとって東京という場所をちょうどいい道具にするという選択を考えたときに、都心から1時間くらいで行き来ができる鎌倉という街を選んだというのはありました。
緒方:そうですよね。ニセコとかも考えたのですが、さすがに遠いなと(笑)。
「わかる」と「つくる」を行き来する
原田:思想や哲学にクリエイターが影響を受けること自体はよくあることですし、そこで出てくるテクノロジーの解像度が低く感じるというところに共感するクリエイターは少なくないと思います。ただ、実際にそれを自分で文章にして、発信をしていくということまではしなくても、学んだことを自分の仕事や暮らしに活かしていくということでも良い気がするのですが、そこで考えをまとめたり、何かを書いて発信をするというプロセスは緒方さんにとってどんな意味があるのですか?
緒方:最初に『情報環世界』という本を書いた時に、「わかるとつくる」というテーマを僕が書いた章のタイトルにしたんですね。それも探り探りだったのですが、なんとなくそれが自分の人生的なテーマだと思い始めて、そのことなら色々書ける気がしたんですよね。自分が考えていることを話しているとみんな結構面白いと言ってくれたりしたので、何回も色んなところで話しているなら、それをブログやnoteなどに書けばもっと色々な人に伝わるんじゃないかと思って書き始めたというのがありました。
Takramというところに惹きつけると、当時メンバーの中で「Thought Leadership」というキーワードについてよく話していて、IDEOなどグローバルなデザインカンパニーの活動を見ている中で、自分たちの思想や考え方をもっと積極的に発信して、そういう部分でも注目されるようになっていきたいよねという話を内部でしていたんですね。そういうことをみんながなんとなく意識するようになって、各メンバーが本を出すようになったというのがあったかなと思います。自分も本を書いてみて、それをきっかけに色々なプロジェクトのご相談をいただいたり、ワークショップや講演に呼ばれたりするということが、すでに本を出して3年経ちますがありがたいことにいまだに続いています。そういう意味で、自分がやりたいことがやりやすくなった部分もあると思います。自分にとって無理のないプロジェクトの進め方や、プロダクト・サービスに対する考え方とかにしても、この本を読んで共感して依頼していただけると、共感から始まるので凄く良いなと。それはやっぱり自分から常に発信していたからこそだと振り返ってみて思いますね。
原田:Takramは「振り子」の考え方を大事にしていて、色々な極を行ったり来たりしながらものをつくったり、物事を考えていくということをされていますよね。例えば、「デジタル」と「フィジカル」、「エンジニアリング」と「デザイン」など色々な極があると思うのですが、緒方さんの中では「わかる」と「つくる」というのもひとつの振り子になっているように思います。
緒方:そうですね。自分がしてきたことを振り返ったりしていく中で、例えばEテレの『ミミクリーズ』という子ども向け科学教育番組を僕が担当しているのですが、それも「わかる」ことを伝えるようなことだし、自分がつくる作品にしても「わかった!」みたいな瞬間の体験をどう設計するのかということを結構意識していて、「わかる」というのは自分のテーマだなと。でも、「わかる」だけを考え始めると、「脳科学的に『わかる』とは?」みたいな話になってしまい、なんか違うなと(笑)。やっぱり「つくる」ことが好きで信じたいというのもあるし、「なんでつくっているのか?」ということに理由はないみたいなこともあって、「わかる」と「つくる」ということを自分のテーマに一回置いてみようと。わかるためにつくることもあるし、つくってみたらわかるみたいなこととか、わからないからつくるとか、わかるようにつくるとか、その関係は色々あるけど、自分がやっていることは結構そこに集約されるような気がしています。
原田:先ほどお話しいただいたように、本を書きながら移住をするというのもそうですよね。移住は「つくる」ではないかもしれないですが、理解しようとしながら実践をしているというか。
緒方:そうですね。つくるというものを凄く広く捉えているので、最近の言葉で言うと「リテラシー」と「コンピテンシー」みたいなことに当てはまるのかなと。「実行する」とか「実践する」とかそういう意味で使っている気がします。
原田:「わかる」ということは、何かの答えをもらうということではなく、能動的にわかろうとすることが凄く大事だなと思っています。わかろうとするからわからないことが見えてきて、わからないことが見えてくるからつくる。あるいは、つくってみても答えはわからないけど、つくったことで次のアクションにつながっていくとか。「わかったからつくる」「つくったからわかる」ということではなく、わかろうとすればするほどわからないことが見えてきて、そことどう向き合うのかということが、ものをつくったりデザインをする上で凄く大事な姿勢なんだろうなという気がしています。
緒方:そうですね。未だに影響を受けているのは、脳は常に予測をしていて、予測と違うことがあったときに初めて脳に情報がインプットされるという話です。何かが予測通りに起こるということは凄く心地良いわけですよね。だから別に分かる必要もないし、何かをつくろうとも思わない。「わからない」ということに直面して初めて、予想と違うという状態が起こる。ズレが生じた時にそれを解消しようとするという意味では、実は「わかる」も「つくる」も同じなんじゃないかなと。自分の側の考え方やモデルを変えることで「わかる」ようになるし、逆に自分が思っていることの方が良いんじゃないかと思ったら、それを発信したり、実行したり、つくっていくことでズレを埋めるという方法もある。世界の側を少し変えるという言い方はあまりしたくないのですが、なにかズレが生まれるみたいな感じで考えているので、「わかる」も「つくる」もそういう意味では一緒なのではないかと。
個人が組織の輪郭を拡張する
山田:デザイン関連の取材をする仕事を続けていると、組織のあり方がピラミッド型から円型に変わってきているなと最近凄く感じるんですね。一人のトップデザイナーがいるピラミッド型の組織から、中心に誰かはいるんだけど、そこから球型に人が広がっていくような。お話を聞いていて、Takramという組織は分子結合図のようだなと感じました。
緒方:そうですね。昔から言っていますが、輪郭を拡張してくれる人が集まって組織の輪郭ができていくような組織のイメージを持っています。その形はよくわからないですが、新しい人が入ってくるとその人の分だけ輪郭が拡張されていくようなイメージですね。
山田:なぜこのように多様な個人が集まり、Takramという組織がつくられているのでしょうか?
緒方:組織としての寛容さというか、幅が広いと思うんですね。例えば、もう少し個人事業主の集まりのような組織の形態もあり得ると思うし、そういう形でうまくいっている人たちもいますが、Takramが割としっかり組織としてやっていく中で、それぞれの考え方やつくっているものに対して凄く寛容で、むしろそこに次の可能性を見出し、みんなで信じようというマインドを持っている気がします。みんな凄く好奇心が旺盛で、自分の専門領域があっても、そうじゃない専門領域に凄く興味を持ったり、面白がったりするマインドを持っている人が向いている組織なのかなと。
毎週「Weekly Allhands」という毎週みんながZOOMで集まる時間があるのですが、その中で「Pendulum of the week」という時間があるんですね。そこでは、それぞれが仕事とは関係ない、いまハマっていることを15分くらいで話すのですが、それが面白いんですよ。毎回それを聞きたいからこそ、ちょっと面倒くさくても定例に出るかという気がするくらい凄く魅力的なコンテンツで、意外な発見があったりしてメチャメチャ面白いんですよね。
原田:最後に、緒方さんから今後のお知らせや告知がありましたらお願いします。
緒方:特に直近でこれというものはないのですが、今年になって「わかるとつくる」というブログを始めました。これまでやっていたnoteもやめたわけではないのですが、自分のドメインで新たに始めたので、良かったら覗いてみていただければと思います。
原田:次回は、Takramの相樂園香さんにご登場いただきます。相樂さんはCulture & RelationsというチームでTakramのカルチャーを内外に伝えていくような活動されている傍ら、「Featured Projects」というデザインフェスティバルの運営などいろいろな活動されている方です。
今回のシリーズでは、毎回お招きしているゲストの方に、次回のゲストのご紹介をしていただこうと思っているのですが、緒方さんから見た相樂さんはどんな方でしょうか?
緒方:相樂さんはTakramではSandyと呼ばれています。Culture & Relations自体は最近できたチームなのですが、Takramも人が増えてきて、日々プロジェクトに取り組んでいるばかりで外に発信していくことがおそろかになりがちだったりする中で、外に向けたリレーションもそうですし、組織の中のカルチャーも人が増えていくほどほっておくとバラバラになってくる部分が出てきます。そうしたところを見れるチームをつくろうという時に、中心として入ってくれたのが相樂さんです。自分でも印刷やクラフト的なものを色々やっているというのを僕は後から知ったのですが、そこも凄く面白いなと。PRやコミュニケーション、チームづくりみたいなことをやる一方で、本人はメチャクチャ印刷マニアなところがあったりして(笑)、それこそその振れ幅が面白いと思っています。
原田:ぜひそうした振り子の話を聞きたいなと思います。緒方さん、今日はどうもありがとうございました。
緒方:ありがとうございました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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