選べる豊かさを届ける、マスプロデュースされたクラフト | 山野アンダーソン陽子さん × Straft・石井珠樹さん 〈1/4〉
「デザインの手前」は、デザインに関わる編集者2人が、さまざまなクリエイターをお招きし、デザインの本質的な価値や可能性についてお話しするトークプログラム。ニュースレターでは、最新エピソードの内容をテキスト化してお届けしています。今週からガラス作家・山野アンダーソン陽子さんとクラフトデザインユニット・Straftのシリーズがスタート。初回は、山野さんの活動にフォーカスします。
接近するデザインと工芸
原田:先週までエンジニア集団・nomenaの武井祥平さんのシリーズを4回に渡ってお届けしてきましたが、今週からまた新しいシリーズがスタートします。今回は、2組のゲストにご出演いただきます。ガラス作家の山野アンダーソン陽子さんと、クラフトデザインユニット・Straftの石井珠樹さんです。山野さん、石井さん、よろしくお願いします。
山野+石井:よろしくお願いします。
原田:Straftは、石井さんと山上和真さんによるユニットなのですが、今日は代表して石井さんにお越しいただいております。山田さんは石井さんと何回か面識があるんですよね。
山田:はい。何度かお会いしていて、半年くらい前もバリでご一緒しています。
原田:そして、山野さんは山田さんと仲良し、ですよね?
山野:ですかね(笑)。
原田:もともと2人はどのくらい前に知り合ったのですか?
山野:15、16年前かな。
山田:まだ僕が『Pen』という雑誌で働いていた時に、山野さんに作品制作をしていただいたり、山野さんとゆかりのあるインゲヤード・ローマンというスウェーデンを代表するデザイナーのインタビューをしたりしました。山野さんは本当に色々な雑誌で取材をさせていただいています。
原田:山野さんはガラス作家で、Straftも「クラフトデザインユニット」と名乗られていて、そこからもお分かりのように今回は「工芸」「クラフト」というところがテーマになると思いますが、今回なぜこの2組なんでしょうか。
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山田:プロダクトデザインの文脈で、この10年以上クラフトからの影響が大きくなっていて、例えばLOEWE CRAFT PRIZEのようなものもあったり、非常にクラフトとデザインが寄ってきている一方で、やっぱり別のものでもある。今回お声がけしたおふたりはともにデザインを学ばれた上でクラフトを志向されている。その辺りの考え方がどういうところにあるのかということを解き明かせたらと思っています。
原田:最近『デザインの手前』でも、デザイナーの狩野佑真さんとグラフィックデザイナーの𠮷田勝信さんのシリーズがありましたが、おふたりはデザイナーではあるけれど、かなり工芸的なものづくりを志向されていて、まさにデザインと工芸が近づいているということを象徴する回だったような気がしています。今日はその辺りをより深掘りできるのではないかと。
山田:そうですね。
原田:まずは2組のプロフィールをご紹介させていただきます。
山野アンダーソン陽子さんは、1978年生まれのガラス作家です。日本の大学を卒業後、北欧最古のガラス工場・コスタの学校で吹きガラスの手法を学び、その後スウェーデンの国立美術工芸デザイン大学コンストファックのセラミックガラス科修士課程を修了されました。それ以来、ストックホルムを拠点に活動し、作品はスウェーデン、イギリス、日本などを中心に展開されています。2023年から2024年にかけて、展覧会『ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家』が広島、東京、熊本を巡回するなど、ガラス食器のあり方を多方面から表現、思考される活動を展開されています。
続いて、Straftのプロフィールをご紹介します。Straftは石井珠樹さん、山上和真さんによるクラフトデザインユニットです。東京造形大学インダストリアルデザイン専攻卒業後、東京を拠点に活動を開始されました。日本の伝統に深く根ざした稲藁を主な素材として扱い、自然の美しさを際立たせる独自の作品を制作。インスタレーションや家具デザインなど表現は多岐にわたり、自然との調和を目指した活動を国内外で行っています。
ここから4週に渡って、この2組とお届けしていきたいと思います。山野さん、石井さん、よろしくお願いします。
山野+石井:よろしくお願いします。
原田:まず今日は主に山野さんの活動にフォーカスしてお話を伺い、2回目はStraftの活動を石井さんに伺えればと思っております。3回目、4回目はクロストークという形で、冒頭にもお話ししたデザインと工芸の話や、海外での活動というところを聞いてみたいなと思っています。

ガラスというマテリアルへの興味
原田:今日は山野さんの活動についてお伺いしていきたいと思うのですが、プロフィールでもご紹介したように現在山野さんはスウェーデンで活動されています。スウェーデンはガラスの工芸が盛んな場所だと思いますが、そもそもなぜスウェーデンに行かれるようになったのでしょうか?
山野:私は、ガラスというマテリアル自体に子どもの頃から凄く興味があったのですが、どうやってつくられてるのかがあまりわかんなかったんですよ。いまみたいにネットがあった時代ではないから神保町に行ってみたり、図書館とかで「ガラスって何だろう?」と色々調べても、行き着かないことがたくさんありました。体験などもしてみたのですがうまくできなくて、その難しさや情報のなさがあったからのめり込んでしまったのだと思います。
原田:逆にですか?
山野:逆に。最終的に「マスプロデュースされたクラフト」という言葉が自分の中で出てくるのですが、当時から同じようなものがいっぱいあるということが好きだというのがありました。全然変わらない同じものがたくさんあることはそんなに興味がなくて、微妙に違うものですね。例えばグリーンピースなどもそうですが、みんなグリンピースだけどよく見たら微妙に違う。そうした小さい個性みたいものが凄い好きだったみたいで。いまここにある湯呑みなどもそうですが、微妙に一つひとつが違うところに人間らしさ、その素材らしさみたいなものがあって面白いと思っていたのだと思います。
そういうことが学べる場所がどこだろうということを高校生の頃から考えるようになって、スモーランドという南スウェーデンにガラス工場地帯があることを知りました。スウェーデンでは当時から国がガラス産業に力を入れたんですね。もともとこの地域は水や森が豊かな場所で、木などの材料がたくさんあったので、国をあげて鉄産業に力を入れていたのですが、それがガラスに移行して産業として大きくなっていきました。100社くらいのガラス工場があって、脚付きが得意なところ、ブルーのガラスが得意なところなど工場別に得意分野があるんですね。この地域でガラスを学びたいと思い、スウェーデンに行くことを決めました。
原田:そもそもガラスに興味を持ったのはどういうきっかけだったのですか?
山野:ちゃんとは覚えていないのですが、母と北欧の展示会を見に行ったことがあったんですよ。そこでフィンランドのガラスや陶器なども展示されていたのですが、ガラスというものに触ったことがなかったし、透明の素材というのが凄く不思議で。小学生だったということもあって、「なんでこんなに透明なんだろう?」とか、「どうやってつくったら透明になるんだろう?」ということに疑問を抱いてしまったんです。透明って不思議じゃないですか?
原田:不思議ですよね。珍しい素材ですよね。
山田:そうですね。ガラスでスウェーデンに行くということは結構早くに決めていたものの、すぐに行ったわけではないんですよね?
山野:ガラスが好きだから、ガラスのことだけやればいいのかと思っていたのですが、小学校高学年くらいの頃に親戚の画家にどこかでガラスを学びたいという話をしたんですね。その方は芸大を出ていてフランスにいたのですが、「僕が君の歳だったら色んなことをやってみる」と言ったんですよ。日本は陶芸が強いから、陶芸を学んでからガラスに行くと“陶芸頭”になってしまうから、僕だったらガラスを一から学べるように全く違うマテリアルを勉強したり、違う視点からものを見てみると。
海外に出てからガラスを習うことにして、それまでは他のことやってみたらとアドバイスしてくださったです。自分では客観視していなくて、「ガラス面白い!」という感じだったのですが、一歩か二歩か三歩か引いてガラスの存在を考えるきっかけになって、他のことを勉強してみようと。それが凄く良かったなと思います。
原田:具体的にガラス以外でどんなことを学ばれたのですか?
山野:テキスタイルと絵画をやっていました。あと、実はコンストファックでインダストリアルデザインコースも取ってるんですよ。私たちがいたガラスセラミック学部は4、5年生になると自由に自分の課題を決めて、ものをつくるのですが、ガラスセラミックは個人プレーなんです。もちろん、ガラスはチームワークも必要なのでアシスタントに頼むことはあるのですが。
一方で、学校の修士で取ったインダストリアルデザインコースでは、みんなチームで動くんです。例えば、一緒にソルト&ペッパー入れを考えようといって試作をしたり、どういうところに着目したらいいかといった議論をした上で家具をつくったりするんです。自分一人で「これが好きだ」ということを突き詰める以上に、人がどう思ってるのかを考えたり、人が求めているもの・求めてないものを共有できることが面白いなと思ったんです。それで、4年生の時にインダストリアルデザインコースにも籍を置かせてもらいました。4年というのは大学院の1年生にあたるのですが、私たち工芸のコースはは手でつくってナンボというところがあるんですね。一方でインダストリアルデザインコースはセオリーが中心で、結果としてモノができていなくても、話した過程とかブレインストーミングのようなことだったり、プレゼンでどう落とし込むかということが凄く重要なんですね。そういうバランスが凄く取れたように思います。
結構みんなと色々話し合いましたよ(笑)。それこそデザインとは何かとか、デザイン、クラフト、アートとは何かということも話したのですが、「アート」ということを日本語で説明するのと、スウェーデン語で説明するのではちょっと定義が違って、「この人はアートのことをデザインと呼んでいるな」と思うこともあったり。だから、その定義からみんなで話し合ったりしたのですが、結局わからないという結論に至りました(笑)。国が違えば定義も違うし、私はそれを知らずにものをつくったとしても別にそれでいいという。それがデザインでもアートでもクラフトでも、使い手がどう取るか次第だし、私は別にそれでいいなと思っています。だから、あまりデザインのことは聞かないで(笑)。定義はない、わからない(笑)。
マスプロデュースされたクラフト
原田:使えるものをつくりたいという意識は山野さんの中にあるのですか?
山野:そうですね。食器も一日の中で使われずに目の前に置かれてる時間の方が圧倒的に長いので、もちろんビジュアルなども重要だと思うのですが、「使える」というのは自分が参加している感じがするというか、つくり手ではなくて使い手が主になるじゃないですか。それが凄く好きなんですよね。だから、型を使わずにつくると、例えばドリンキンググラスなどでも微妙に高さや厚みが違うものができてしまうんですね。私が薄いものが好きだと思っていたとしても、逆に厚い方が好きだという人もいる。そうやって自分の「好き」という感性によって参加している感じがするんですよね。選べる豊かさがあるというか。
私はニーズがあるからつくりたいと思っていて、明らかに人がこれを求めているというものをつくれてはいないかもしれないけど、なんとなく自分で「こういうものがあったらいいな」と想像してつくらせてもらうことが多いんです。でも、自分の想像と全然違う使い方をされる方がドキドキして面白いから好きなんですよ。人から「これはこうやって使うんだよ」と言われても、そう使えない時もあるじゃないですか。そんなにお花を飾らないなとか、そんなにビール飲まないなみたいな時は全然違う使い方をするかもしれない。それが人間らしいというか、その人らしさが出る時があって、そこが人の豊かさなのかなと思っています。誰にもジャッジされないところで、人生の自分を自分でものにしている感じをお手伝いできるものづくりができたらいいなと思っていて、最終的にいまのような制作スタイルになってしまいました。
原田:先ほどのマスプロデュースされたクラフトが好きだということはいつ認識されたのですか? ガラスというものに興味持った段階ではすでに感じていたのでしょうか?
山野:そうですね。ガラスというのは同じようにつくろうとしても、厚みなどもコントロールできないし、型を使っていたとしても、よく見ると下の方の厚みが微妙に違ったりするし、特に古いアンティークのものなんかはヨレていたりして、そういうところに素材を感じるんです。液体の感じが凄い好きなのだと思うのですが、そもそも人間も流動的じゃないですか。自分自身の考え方もそうだし、生きている様も流動的ですよね。ずっと同じであるわけではなくて、カチッと型にはまってこうであるべきということではないところになぜか私は凄く興味があり、ものをつくるとなった時もそこに応えていきたい感じがあるんですよね。
原田:ガラスは凄く流動的でもあるけれど、1回固まるともう1度溶かすことができるとはいえ、そのもの自体は割れない限りはずっと続いていくわけですよね。そういう意味では、劣化しにくい素材でもあるけど、非常にフラジャイルなものでもあるという、そのアンビバレントな感じもまた面白い素材ですよね。
山野:そうですね。ガラス、好きですか?
原田:好きですね。好きだけど、緊張します。
山野:本当ですか? でも、たしかに割れるの嫌だと思いますよね。
原田:思いますね。
山田:でも、山野さんは割れたら次を買ってくれればいいという凄く商売人の想いがあるので。
山野:まいど!って(笑)。違うよ。そんなやめて(笑)。クリアガラスというのはもちろんつくっている場所によって違いはあるのですが、私はスウェーデンのストックホルム周りのレストランなどには割れたら連絡してもらうように伝えていて、それをまとめて取りに行ったり、送ってもらったり、持ってきてもらったりして、溶かして新しくつくり直したり、他の誰かの工房で溶かすということもやっているのですが、クリアでリサイクルできるところも良い素材だなと思います。
山田:プロダクトデザインの文脈の話をすると、この数年金属とガラスに回帰していて、いわゆるモダニズムの素材ですよね。金属とガラスは溶かせば理論上はもう一度素材に戻せるということがあって、金属製の家具が最近凄く増えていることに気づく方も多いと思うのですが、やはりリターナブルであるというところが大きいんですね。もちろんそのためには色んな負荷もかかるし、本当にそれが正しいのかという議論はあるのですが、ガラスも同じで溶かしてもう1回元に戻せる。
僕は山野さんの工房も何回も行っているのでよくわかるのですが、彼女は凄く透明度の高いガラスを大事にされているので、リサイクルする時にもかなり繊細な感覚があるんですよね。濁ってしまうようなガラスであれば、同じガラスを扱う別の作家に展開されていたりとか、色の混ぜ方なども非常に繊細にやられている印象があります。
山野:色使うとリサイクルできないことがほとんどなので、私はあまり色を使いたくないんです。素材自体も弱くなってしまうんですよ。
ただ単に「ガラス、きれいでしょ?」「クリアガラス素敵だね」ということではなく、色々な方にガラスの使い方だったり、ガラスという素材を理解してもらえると、もっと楽しみ方が増えるんじゃないかと思っています。
原田:山野さんが取り組まれている『Glass Tableware in Still Life』というプロジェクトも、まさに「ガラスとは何か?」ということを世に問うというか、永続性もありつつ壊れやすいガラスを絵画にすることで、それが残っていくところがあって、ガラスについて考えさせられるプロジェクトだと思います。このプロジェクトは山野さんの中で今後も継続をしていくという考え方なのですか?
山野:そうですね。絵画の中にガラスが存在しているという『Glass Tableware in Still Life』というプロジェクト自体が、本をつくるというところから始まっているんです。
原田:簡単に概要をご紹介いただけますか?
山野:18名の画家さんにどんなガラス食器を描きたいかということを聞いて、依頼されたガラス食器を私がつくってお渡しし、画家さんたちそれぞれのスタイルで描いてもらったり、もし気に入らなかったら違う形のガラス食器を勝手に描いてもらうというプロジェクトです。
いつもならレストランなどから使うことを前提にご依頼を受けてつくるので、どうしても現実的な制限があるんですよ。食洗機が使えるかとか、棚の大きさやバジェットがこのくらいだからとか。そういう条件をクリアしていくのですが、絵の中に存在しているものは嘘でもいいし、もし200個欲しいと言われても1個渡して、それを200個描いてもらえばいい。絵の中に入ってビジュアルになることで、ガラス食器のファンクションがちょっと消えるんです。とはいえ、食器がメインなので、きちんと使えることを想定しなくてはいけない。そういうアプローチによって、いつもと違うベクトルからガラス食器を思考できるんじゃないかなと思ったんです。
三部正博さんというフォトグラファーと一緒に取り組んだのですが、三部さんにお願いして、それぞれの画家さんのアトリエに出向いて、キッチンやレストランに佇んでいるのではなく、画家のアトリエにモチーフとして佇んでいるガラス食器を撮ってもらい、展覧会では三部さんの写真と画家たちが描いた絵画、私がつくったガラス食器を展示させてもらいました。
はじめは本をつくることが目的だったのですが、色んな方から「展示したら面白いんじゃない?」とお声がけいただき、プレゼンさせてもらって実現しました。大変だったけど、やって良かったです。
原田:先ほどの「ガラス以外のこともやってごらん」と言われたという話にも近いと思うのですが、山野さんはガラスという素材を専門的に扱っているにもかかわらず、ガラスというものを俯瞰的に見ているところが少しデザイナーっぽい感じがします。デザイナーのマテリアルリサーチではないですが、俯瞰的にマテリアルを見ている目線があると感じます。
山野:そうなのかもしれません。
原田:作家とのやりとりもポイントですね。ガラスというマテリアルとは何ぞや? みたいなこととはまた別で、作家さんや写真家さんとやりとりをされていますよね。工芸作家みたいな方のパブリックイメージとして、目の前の素材と向き合って形をつくることに集中するイメージがあると思うのですが、ものづくりを取り巻く人や時間への興味関心が強いということも特徴なんだろうなと。
山野:そうですね。多分これを現代アートという形で現代美術館で展示させてもらうことができたのは、コミュニケーションと取ってくれたからだと思うんですよね。 ガラスと絵画、写真を見せて終わりではなく、コミュニケーションのライブ感だったり、ある種パフォーマンスのようなアートとして捉えてもらえたのかなと。自分でも見えないものを展示していると何となく思っていました。コミュニケーションというのは見えないじゃないですか。目にできないし、表現できない。そこが大きな課題でもあったし、これからの課題にもなってくると思っていて、今後プロジェクト自体は、目に見えないもので表現していくことにもなるかもしれないと思っています。
アーティストでもデザイナーでもない
山田:原田さんが先ほど少し話されていたことにもつながるのですが、山野さんはスウェーデンの中でもちょっと特異な作家で、いわゆる用の美というか、使う道具をこれだけ作家性を持って発表する人はいないんですよね。先ほどインゲヤード・ローマンの話をしましたが、インゲヤードはデザイナーなので、デザインは提供するけど、彼女自身はガラスを吹かないんですよね。だけど山野さんは自分で吹く。スウェーデンにはガラスの作家がたくさんいますが、どちらかというと奇妙なオブジェをつくるというか(笑)。
職人になる人はいますが、道具をつくる作家というのは、日本では陶芸などでポピュラーですが、そもそもスウェーデンにおいては、いわゆるクラフトの作家のような感覚があまりない。ヨーロッパの中にはもちろん陶芸の作家さんもいますが、日本のようにどの県に行っても必ずいるみたいなことはないんです。さらに彼女の場合はガラスを扱っているところにも凄く特異性があると思っているのですが、山野さんはその辺をどうお考えですか?
山野:私は、作家になっているつもりはあまりないんです。私は陶芸も学んできていて、陶器のデザインもしているのですが、作家やデザイナーになっているつもりはなくて。スウェーデン語で「driva glas」という、温かいうちに口を開けるグラスの技法があるのですが、それでつくられた器はお水を飲んだ時にサッと柔らかく水が入ってくるんですね。まだ人件費が安かった時代は、この手法でつくられたものがスウェーデンにはたくさんあったのですが、いまはオートメーションになって、でき上がったところに縁だけを後で温めて丸くして、口が切れないようにする技法が用いられていることがほとんどです。それはそれでいいのですが、「driva glas」でやると凄く口当たりが良くなって、ワインとか水などの液体がスッと入ってくるんです。唇というのは凄く繊細だから、自分たちがわかっていないレベルで何となくそれを感じるんです。
その技術を残してものづくりをしていきたいと考えた時に、人件費の問題もあって工場ではもうつくれない。でも、工房だったらまだなんとか自分たちのチームでつくっていけるんじゃないかということで続けています。自分が作家になりました、デザイナーになりましたというつもりはあまりなくて、なくなってほしくない水やワインを美味しく飲める方法を世界で何人かくらいつくっていてもいいんじゃないかと。需要があるならつくり続けたいというだけの話で、こうあるべきという作家性はあまりないんです。
だから、自分のことアーティストや作家とは思っていないし、かといってデザイナーかと言われるとそうでもないところもあって。私、作家? アーティスト? どう思います?
山田:どうなんですかね。⋯態度は、作家ですよね(笑)。
山野:ウソー(笑)。
原田:残していかないとなくなってしまうというところでいうと、スウェーデンのガラス産業においてもそういうものがどんどん増えているのですか?
山野:スウェーデンのガラス産業は、凄く小さくなっています。それもあって先ほど話したプロジェクトをやったところもあります。私もそうだったように、ガラスというのは身近にゴロゴロあって、みんながつくっているところがわかるものでもない。だから、「わかる人だけわかればいい」という感覚ではいけないと気づいたんですよ。スモーランドもマニアックの巣みたいになってしまっていて、ガラス産業に携わっていない人は、プレスガラスだろうと吹きガラスだろうとガラスはガラスで全部同じみたいになってしまっている。だからこそ、 ガラスをつくってる立場の人間として、色んな人に理解してもらう努力をしないといけないんじゃないかということは凄く感じていて、こういう機会をいただけたらお話しするようにしたいと思っているんです。あまり喋りすぎないようにね(笑)。
原田:ガラス作家の山野アンダーソン陽子さんとクラフトデザインユニット・Straftをお迎えするシリーズ、1回目は山野さんの活動にフォーカスをして、ガラスという素材の話や、ご自身が進められているプロジェクトの話、そして、マスプロデュースされたクラフトという話について伺ってきました。 次回はStraftの活動にフォーカスし、石井珠樹さんに色々お話を伺っていきたいと思っています。
山野:楽しみです。
石井:よろしくお願いします。
原田:では山野さん、今日はありがとうございました。
山野:ありがとうございました。
山田:ありがとうございました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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