マテリアルとモーションで世界の理(ことわり)をデザインする | WOW・鹿野 護さん、北畠 遼さん〈1/2〉【デザインの手前×Web Designing】
「デザインの手前」は、デザインに関わる編集者2人が、さまざまなクリエイターをお招きし、デザインの本質的な価値や可能性についてお話しするトークプログラム。ニュースレターでは、最新エピソードの内容をテキスト化してお届けしています。『Web Designing』との共同企画3回目は、WOWの鹿野 護さん、北畠 遼さんをお招きし、前編ではWOWの映像デザインおける表現やコミュニケーションの話を伺いました。
国内外で活動するヴィジュアルデザインスタジオ
原田:今日は雑誌『Web Designing』との共同企画、3回目になります。今回のゲストは、ビジュアルデザインスタジオWOWの鹿野 護さんと、北畠 遼さんです。よろしくお願いします。
鹿野:よろしくお願いします。
北畠:よろしくお願いします。
原田:まずは、今回の『Web Designing』6月号の特集テーマについて、編集長の五十嵐さんからご説明いただけますか?
五十嵐:はい。4月17日発売になるのですが、今回の特集はWeb制作で使用するアニメーションや3DCGをどうつくり、実装するのかということが主題になります。いまは手軽に(動画を)つくれるようになったところがあるので、その辺をいかにデザインのプロセスに入れていくのかということを主軸に色々な記事を展開していくつもりです。
原田:3DCGと言えばまさにWOWの得意領域というか、ベースになっている部分でもあると思うので、五十嵐さんの方でも聞きたいことなどがあればどんどん入ってきていただきたいなと思っています。
五十嵐:ありがとうございます。
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原田:まずは、WOWのプロフィールをご紹介させていただきます。WOWは、東京と仙台、ロンドン、サンフランシスコに拠点を置くヴィジュアルデザインスタジオです。得意とする3DCGを軸に、CMやコンセプトムービー、ミュージックビデオなどにおける多様な映像表現、店舗、施設、建築、都市などを舞台にしたインスタレーション映像演出、メーカーと共同で開発するユーザーインターフェースデザインなど、多様なヴィジュアルデザインをさまざまなメディアや領域に展開しています。
日本を代表する大手企業や海外のラグジュアリーブランドをはじめとしたクライアントワークを数多く手がけるだけでなく、ディレクター、デザイナー、テクニカルディレクター、プログラマー、UI/UXデザイナーなど各分野のプロフェッショナルたちが制作するオリジナル作品も国内外から高く評価されています。
今回はWOWから、顧問の鹿野 護さんとクリエイティブディレクター/ディレクターの北畠 遼さんをお招きし、前後半2回にわたってお話を伺っていきます。
鹿野+北畠:よろしくお願いします。
原田:WOWの映像デザイン、ヴィジュアルデザインは、スクリーンの中にとどまらない広がりがあり、長い歴史の中で色々変遷もあると思うので、そことも絡めつつ、前半ではWOWの映像やヴィジュアルデザインにおける表現やコミュニケーションの話、後半はヴィジュアルや映像を通じた体験のデザインの話をお聞きしたいなと思っています。
端的に言うと、前半は主にスクリーンの中で展開されるコンテンツとしての映像のデザインについてお聞きし、後半ではスクリーンを飛び出して、プロダクトや空間、建築などに拡張していく映像を通じた体験のデザインをテーマに聞いていけるといいかなと思っています。

原田:まずはお話を伺っていく前に、鹿野さん、北畠さんそれぞれのキャリアと、現在WOWでどんな役割を担っていて、どんな仕事をされてきたのかというところから簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか?
鹿野:改めまして、WOWで顧問をしている鹿野 護と申します。私は、創立メンバーとしてWOWの初期のプロジェクトに多く関わってきています。1999年くらいからWOWに関わっているので、ほぼ全体の流れを見てきています。その中で自分がやってきたことの大きいポイントとしては、それまで広告を受注しているという状態から、オリジナルワークを立ち上げて、自分たちで表現を発信していくという方向に舵を切ったということがあります。
以前は、自分がつくるという立場でしたが、いまは大きな方向性のアドバイザー的な形で関わっていまして、具体的にヴィジュアルをデザインしたり、ディレクションするのは、北畠なんかがリーダーシップを取ってやっています。2012年頃から教育にも関わっていて、大学教育で映像を教えているので、改めて「映像って何だろう?」 とか、「いまの映像に何が求められているのか?」ということを最近凄く考えるようになっているので、今日はそういう部分もお話しできればと思っています。
北畠:北畠と申します。WOWでは、クリエイティブディレクター兼ディレクターとしてがんばっています。僕は2013年に入社し、当時はヴィジュアルデザイナーという形だったのですが、そこから8年くらい勤務して、実は一度WOWを退社しています。あるEC系の事業会社に移り、そこではマスコミュニケーションやコーポレートブランディングなどのクリエイティブを担当していました。そこからまた縁があってWOWに戻ってきているという状態です。仕事の内容としては、来る者拒まずという感じで、自分としては何でも屋さんみたいにやっています。入社した当時はCGデザイナーみたいな感じだったのですが、撮影のディレクションをやってくれと言われたり、無茶ぶりに対応しているうちに、自分がやっていないことをやることも楽しいなと感じ、色々表現の領域を広げてきました。
原田:北畠さんはバックグラウンドとして、もともと映像を学ばれていたのでしょうか?
北畠:入社した当時はどちらかというとグラフィックデザインなど静止画がメインだったのですが、そこから徐々に動画、実写に入り、UI/UXやインスタレーション、空間デザインなど色々やっている感じですね。
原田:まさにWOWがデザインする領域の拡がりとともに、北畠さんのカバーする領域も広がってきている感じなんですかね。
北畠:そうですね。意外と呼応しているかなという気がしますね。

WOWのヴィジュアルデザインとは?
原田:いまや25年以上の歴史を誇るWOWの映像表現は世界的にも高く評価されています。そういった映像表現の背景にどんな考え方があり、実際にどういうプロセスでつくられているのか、コミュニケーションとしての映像デザインという観点も踏まえて、前半はスクリーンの中での映像表現について聞いていきたいと思います。
WOWは「ヴィジュアルデザインスタジオ」と銘打っていますが、「ヴィジュアルデザイン」という考え方がどういうものなのか、端的に映像制作ということとは少し違うようにも思うのですが、まずはその辺りの考え方からお聞かせいただけますか?
鹿野:色々なスタッフがいて、色々な側面からWOWというものが構成されているので、あくまでも相対的に見たWOWのデザインの特徴というか、ヴィジュアルデザインについてお話をしたいと思います。
映像というのは、設計図があってその通りにつくるような仕事が結構多いんですね。要するに、受注の状態でコンテも仕様も決まっているものが多かったんですね。それを設計図通りにつくるのではなく、設計図自体を一緒に考えようということだったり、そもそもつくること自体が適切なのかを問うというところに自分たちの視点を広げたり、関わり方を変えていく中で、単にコンピューターグラフィックスのオペレーションをするのではなく、デザインというキーワードで問題を解決したり、価値をつくり出したりということをしたいという一種の会社のパーパスみたいなものを立ち上げました。それに則って、みんなでただつくるのではなく、「これはどんな社会的意義があってつくるのか?」ということも含めて考えていこうという流れが生まれ、それにみんなが乗ってさまざまな表現をしているというのが私のWOWの印象です。
北畠:僕も同じような印象です。1度WOWを辞めて、事業会社でWordとExcelを叩くような日々が続いていたのですが、そういったところで映像のコンテンツをつくるにしても、凄くロジックベースで進むところがあるんですね。個人の感覚というよりも、何かしらのロジックが裏側にあって、それによって色々な意思決定がされていくような環境で仕事に従事していました。その中にはうまくいくものとうまくいかないものがあって、うまくいくものはどこかに誰かの趣味趣向や、「これがやりたい」という理性的ではない個人的な感覚というものによってドライブがかかるところがあると思っていました。その時にヴィジュアルというのがトリガーになると思っていたんですね。WOWでもヴィジュアルから思考の連想ゲームのようなことが起こったり、いままで考えていたものの外側に到達できるということがよく起こったりするんですね。僕らのヴィジュアルデザインというのも見た目をつくるというよりも、既存の枠組の外側に思考を飛躍させるためのツールとして僕は捉えているところがあります。
鹿野:要するに言語以外の情報や表現で、言語以上のものを生み出すことだと思うんですよね。それがグラフィックデザインの場合は、レイアウトや構成、色彩みたいなところになりますが、WOWの映像の特徴として、マテリアルとモーションで世界観をつくるということが往々にして起きているんですよね。そこには言葉もなく、主人公もいないみたいな状況なのに、世界観のストーリーテリングができてしまっているというのは一つの大きなポイントで、非言語情報のスペクタルみたいなものをつくっているんじゃないかなと思っています。圧倒的な美しさや、言葉にならない表現みたいなものをうまくつくっているスタジオなんじゃないかなと思っています。
美しさとは関係性をつくること
原田:ここまで、ヴィジュアルデザインにおける「ヴィジュアル」の話を主にしていただいた気がするのですが、「デザイン」という行為や営みについては、WOWとしてどのように捉えているのでしょうか?
鹿野:「表現」と「デザイン」は一緒に考えがちなのですが、やはり「デザイン」というものを軸にした方が良いなと思うんですよね。例えば、社会にある課題や問題、ニーズみたいなものを、最適な方法で解決したり、それを補ったりする行為そのものがデザインだと思うんですよね。その時に表現というツールがあり、それを上手く使って問題を解決しようということになってくるんじゃないかと。ただ、先ほど北畠が話したように、表現すること自体は凄く面白いもので、個人個人のモチベーションを上げていくものだったりするわけなんですね。デザインというものをメソッドとして、ただ分析的に使っていくのではなく、個人の初期衝動みたいなものを上手くかけ合わせた状態のデザインというものが生まれると凄く良い作品がどんどん出てくるし、WOWはそれをやりやすい環境と言えるかなと思います。分業があまりされていないということも大きなポイントだと思っていまして、結構ジェネラリストというか、一人が企画からフィニッシュまで関わるようなことが多いですよね。
北畠:そうですね。手を挙げれば何でもできるみたいな感じですし、ジュニアクラスからシニアクラスの人まで平等にアイデアを出し合って、面白くてアイデアが採択されればその人がディレクターとしてその案件を最初から最後まで面倒を見ますし、そういった意味では凄くフラットで、アイデアが面白いかどうか、適切なものかどうかというところでジャッジされている感じですね。
原田:何かの課題をクリアしていくために、個々の表現を尊重しつつ、ここはちゃんと守っていこうという共通認識のようなものはWOWの中で何かあったりするのでしょうか?
鹿野:「WOWっぽさ」みたいなものがあるとよく言われることがあるのですが、WOWの世界観みたいなものがどうやってつくられているのかというのは内部的にもわからないところがあると言えばあるんですね。ただ、以前にWOWのクリエイター、デザイナーたちに「美しさとはなんだと思いますか?」というアンケートを取ったことがあるのですが、多くの人が「関係性をつくり出すこと」という話をしていて驚いたんです。それが凄く意外だったのですが、例えば音と光の関係性や対比など、そういったものを生み出すことによって美が生まれるといったことをかなり多くのデザイナーが話していました。別に会社として共有しているわけではないのですが、もしかすると表面的な層をつくるのではなく、問題解決のために必要な関係性をつくり出すことに重点が置かれているのではないかなと感じたことがありました。
北畠:関係性というところは僕も本当に共感するポイントです。WOWに色んな視点を持ったアーティストやクリエイターが在籍していること自体が凄く価値があることだなと思っていて。デザインというものをどう定義したらいいのかということについては、僕も正直答えは持っていないのですが、往々にして課題解決の文脈で考えた時には、その課題設定が間違っていることがすごく多いなと思っていて。事業会社にいた時も、一見正しそうに見えるロジックやアプローチみたいなものがあって、そうした土台の上に積み重なるものが必ずしも良いクリエイティブになるということはなくて、むしろあまりそういうことはないんです。では、どうしたらそのロジックの渦みたいなところから抜け出せるのかというと、やっぱり視点の多様性というか、同じ方向ではなく、色んな方向を見ている人が存在していること自体がひとつの方法だと思っていて、ひいては良いクリエイティブをつくるために必要な状態だと思っています。そういった意味で、WOWの状態というのは本当に良いものが生み出されるための条件としては凄く良いなと感じています。
鹿野:課題を分析して、カウンセリング的に問題を解決していったり、デザインメソッドやヴィジュアルランゲージを使ったり、方法論だけを積み立てても最終的に人は感動するのかというと難しいところなんですよね。問題解決型とかツールをつくるだけじゃない人を感動したり、心を動かすみたいなところにいくには、もう一歩理論だけではない部分が必要になってきて、それがWOWのデザインの中で結構重要なポイントになってくるのかなというところはあります。
原田:これはおふたりが担当されたプロジェクトではないと思いますが、去年六本木で行われたDESIGN TOUCHというイベントでも展示されていた「InForms」というデータヴィジュアライゼーションのプロジェクトがありますよね。これも凄くWOWらしいデザインのアプローチだと思っています。色々な社会課題に関するデータがヴィジュアライズされていて、データ自体に物質性や質感があるんじゃないかというところから映像表現としてつくられたり、さらにその先で立体物をつくったり、そういうことも含めて、データをヴィジュアライズしていくというグラフィックデザインの手法に立脚しつつ、さらにそこにデータに質感があるんじゃないかということだったり、受け手側が能動的に関わっていけるような、創造性を刺激するようなヴィジュアルになっていて、そういうところも凄くWOWらしいアプローチだなという気がしたんですよね。先ほど北畠さんがデザインの定義はなかなか難しいとおっしゃっていましたが、多分WOWの中で色々なデザインの捉え方があって、かつ「関係性をつくる」ということも含めた表現に対する共通する意識などが合わさっていくことで、色々なアプローチでヴィジュアルデザイン、映像デザインを通してできることが常に更新されているようなイメージがあります。
鹿野:情報を情報としてだけではなく、記憶や感動に変えていく作業になってくると思うのですが、その時に情報に対してキメ、質感、匂い、温度といった有機的なもの、人が認識するメタファーみたいなものを提示するということがWOWのデザインにおいて重要なポイントになっているんじゃないかなと思いますね。メタファーみたいなもので提示された時に強い印象としてそれが残っていくというか、そんなことを起こしたいと思っているんじゃないでしょうか。
山田:作品そのものは問題解決といったテーマよりももっと直感的に、鑑賞者の目が凄く楽しくなったり、感情に訴えかけてくるようなところがあって、それがWOWの共通項というか、クオリティがいつも高くて、見た時に自分の中にある直感的な喜びにつながっているような作品になっていて、それがまさに鹿野さんが仰っていることなんだなと。
鹿野:情報を正しく伝えるということは、Webサイト制作などでは絶対に求められると思うんですね。ただ、正しく伝えても人が動くのかというところもあると思うんですよ。心に響かなければ人は絶対動かないと思うんですね。その響かせ方というのが、これだけ情報過多な社会になっている時に、言葉なのか、売り文句なのか、キャッチコピーなのか、色々要素がある中で、マテリアルやモーションというのは若干温度が低いような情報なんですよね。ちょっと引いたような情報で攻めるけど、それが最終的に非常に強い印象に残るみたいなことを狙っているものがWOWには多いと思うんですね。だから、言葉を使った表現が少ないことも特徴かと思います。
人を動かす「世界観」をつくる
原田:北畠さんはBAOBAO ISSEY MIYAKEのムービーなどを多く手掛け、長くパートナーシップを組まれていると思いますが、クライアントとなるような企業やブランドとのパートナーシップ構築や対話において大切にしていることもお聞きしたいです。
北畠:あまりトリッキーなことをしているわけではなく、こうやって会話をするということを一番大事にしていて、もう本当にそこに尽きるかなと思います。何か奇をてらった提案をしているとか、クライアントさんが思い描いているものとまったく違うものをわざと持ってくるというような技術的、戦術的なことを別にやっているわけではなくて、クライアントの人となりだったり、企業としてどういうところに価値を置いているのかとか、どういう哲学を持っているのかということをなるべく深くまで掘り下げいった時に、僕らがビジュアルやストーリーで解決・表現できることとのつながりが見えてくるんですね。そうなった時に、ある程度想像しているであろう案、もうちょっと飛躍している案、また別角度からの案といった感じで、コミュニケーションの中で見つけ出したポイントをどっちの方向から見るのかというところで複数の案を提案させていただきます。
まだ僕らにお話が来る段階では抽象的な状態なので、クライアントさんもどう考えていいかわからないようなことがあると思うので、結構早い段階で視覚化するということはよくやりますね。初期段階の提案の時に、そこまで求められていなかったとしてもプロトタイプのような感じでヴィジュアルをつくってみて、ストーリーや僕らの考えと一緒にお見せするとそれがトリガーになって、クライアント側も「なるほど、そういう見方があるなら、こういうこともいいんじゃないか?」といった感じでエンジンがかかり出すというか。早い段階でヴィジュアルを使ってコミュニケーションを促進し始めると、みんなが想像していなかったようなところにいけるということが結構多いですね。
五十嵐:ストーリーをうまくつくっていくということも、言葉で説明していくとたしかに論理的にはできるけど、それを説明したところでその通りにやったらストーリーはでき上がるのかというとそうでもないというか。そういう言葉と感覚の微妙なズレみたいなところをWOWさんは凄く得意にされているのかなという印象は受けましたね。
鹿野:数値化できるものというのは説得がいらないじゃないですか。例えば、コーヒーカップが1000円で売っている場合は、「1000円です」ということでしかないんですけど、これがもの凄い価値を持っていて、欲しくなるものだという言葉にならない情報があった場合、説得が必要ですよね。買う側には納得が必要になる。その時に何が必要かということを考えた時に、数値やデータではない副次的でメタな情報が必要になってくると思うんですよね。そこでやっぱり重要なのは世界観だと思っていて。そのコーヒーカップがどんな世界観の中に存在しているものなのかということを理解すると、「なるほど、ほしい」とか「凄く感動した」というところにつながるんじゃないかと思うんですね。
最初の段階からヴィジュアルをちょこちょこ出していくというのも、その世界観をどう定義していくのかというところのシュミレーションになっているかと思います。クライアントがその世界観に気づいた時に、「こういう世界観ならここにカメラ置いたらこうなるよね」とか「こういう景色が見られるんじゃない?」のみたいなことを関わってみんなが語り出せるというようなことが起きてくるんですよね。表面的にヴィジュアルをつくっているだけだとそれはなかなか出てこなくて、似ている/似ていない、好き/嫌いにしかならないんですけど、世界観をつくり上げていくとそういう大きい広がりにつながっていくんじゃないかと思っているところがあって。世界観という言葉はちょっと曖昧ではあるのですが、とても重要な概念だと思いますね。
北畠:何かしらのヴィジュアルをつくるということがパパッと凄く簡単にできるようになってきた時代に、何が人を動かす要因になるのかというところに対するフォーカスがより鮮明になってきていると感じていて、世界観というのはその中の最たるものだなと僕も凄く思いますね。
鹿野:そのブランドや対象になっているモチーフがどういうことわりの中に存在しているのか、どういう可能性を持っているのかということを含めたデザインになっていると思うんですよね。それが表層と違って、関係性をつくるとか、ある意味で仮想の空間や世界をつくっているみたいなところに近づいてくるのかなと思ったりしますね。
五十嵐:先ほど北畠さんはクライアントと普段通りのコミュニケーションを取っているというお話をされましたが、それを聞きながらクライアント側がその世界観を理解することは結構難しいと思うんですね。そこにはコミュニケーションの取り方だったり、クライアントが求めているものを引き出すコツというものが何かあるのかなと。
北畠:たいていひとつの案を提案する時には3枚くらいヴィジュアルを用意して、「こういう感じの世界観です」ということを伝えるんですね。その時にどのシーンを切り取って3枚選ぶのかというところにも結構気を配っていて、4コママンガ的な考え方で、その世界観を伝えるための最小単位というものをかなり考えて、その3枚なり4枚を見れば「こういうことがやりたいのね」ということが伝わるような設計には毎回していますね。
鹿野:その時に、光とか「どこから見ているのか?」ということが凄く重要なんですね。ヴィジュアルが持っている特性はそういった相対的なものだと思っていて、例えばカメラが下から煽っているのか、上から俯瞰しているのかで精神的な捉え方は違いますし、光がどこからどういう強さで来ているのかというところで印象は凄く変わってくると思うんですよね。その設計をちゃんとできるデザイナーがWOWには多いので、説得の時に非常に強い武器になると思うんですよね。そこがちょっとでもズレると多分全然ダメで、信頼感もなかなか見出せないというか。だから、初期段階でディレクターや企画をしている人が実際に自分でつくってしまうというところも多分WOWの強みですよね。
原田:今日は、鹿野さんと北畠さんに、WOWの映像デザイン、ビジュアルデザインにおける表現やコミュニケーションのお話を伺ってきました。その中でも再三出てきた「WOWらしさ」や「世界観」というところにつながるものとして、実はWOWでは色々なオリジナルプロジェクトを手掛けらています。後編では、こうしたオリジナルプロジェクトについてお聞きしつつ、さらにいまスクリーンの外にどんどん拡張しているWOWの映像やそこに伴う体験のデザインなどについてお話を聞いていけたらと思っています。ここまでどうもありがとうございました。
鹿野+北畠:ありがとうございました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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