形態は「関係」に従う!? 関係に導かれる本質的なカタチ | 太刀川 英輔さん〈1/4〉
「デザインの手前」は、デザインに関わる編集者2人が、さまざまなクリエイターをお招きし、デザインの本質的な価値や可能性についてお話しするトークプログラム。ニュースレターでは、最新エピソードの内容をテキスト化してお届けしています。2025年最初のゲストは、NOSIGNER代表の太刀川英輔さん。初回のエピソードでは、NOSIGNERの由来にもなっている、カタチの背景にある「関係」について伺いました。
中華街にあるサーキュラーなオフィス
原田:今日は、新年最初のゲストをお招きしています。僕らはいま横浜に来ておりまして、ビルから中華街が見えるオフィスの中にいます。メタリックな素材が使われているオフィスになっていますが、聞いたところによると、以前の内装を解体した際に出てきた軽量鉄骨をメインで使っているサーキュラーなオフィスということです。実は僕はよく来ている場所で、お付き合いが長い方が本日のゲストです。NOSIGNERの太刀川英輔さんです。よろしくお願いします。
太刀川:よろしくお願いします。
山田:よろしくお願いします。
太刀川:山田さんはだいぶご無沙汰していますね。
山田:そうですね。多分十数年ぶりだと思います(笑)。
原田:まずは太刀川さんのプロフィールをご紹介します。太刀川英輔さんはデザインファーム・NOSIGNERの代表です。グラフィック、プロダクト、空間、建築など領域を横断してデザインをされていて、これまでに100以上の国際的なデザイン賞を受賞されています。気候変動、再生可能エネルギー、防災、地域活性など社会課題を扱うプロジェクトを多数手がけられていて、主なプロジェクトとしては東京都全世帯に配布された防災ブック「東京防災」のデザインおよび編集、東日本大震災の被災地で役立つさまざまな情報をまとめたウェブサイト「OLIVE」、新型コロナウイルス感染症から身を守り、感染拡大を抑えるための共同編集サイト「PANDAID」の立ち上げ、横浜DeNAベイスターズ、山本山、秋川牧園などのブランディングやデザインディレクションを手がけています。
気候変動に適応するレジリエントな都市開発のためのデザイン戦略「ADAPTMENT」の策定などもされています。また、生物進化の構造を創造性学習に応用する思考法「進化思考」の提唱者で、同名の書籍を刊行され、数々の企業において進化思考を活用したイノベーション創出支援を行っています。JIDA、日本インダストリアルデザイン協会の歴代最年少理事長であり、現在はWDO(世界デザイン機構)で、日本人唯一の理事を務めていらっしゃいます。
そんな太刀川さんとこれから4回にわたってお届けしていきます。よろしくお願いします。
太刀川:よろしくお願いします。
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原田:新年一発目ということなので、せっかくなので太刀川さんの2015年の抱負や、今年のトピックがあれば聞かせてください。
太刀川:最近、色んな地域の気候変動のプロジェクトを手掛けているんですね。どういう風にそれぞれの都市を適応した場所にできるかということをやっているというのがひとつあって、先ほど「ADAPTMENT」と紹介して頂いたプロジェクトです。
適応を考えるにあたって僕は自然から学んだ方がいいと思っているし、「進化思考」がその手法になるところがあるので、それを色んなところで広めてみているということと、それに伴うデザインのケースづくりをしています。例えば、いまはトレーラーハウスを設計しているのですが、これはソーラーと雨水利用ができるもので、結構シンプルでカッコ良いものになるんじゃないかと思うのですが、それがもうすぐリリースされます。能登半島では創造的復興というテーマを県が掲げていて、僕も復興の委員をやっているのですが、現地でヒアリングするとオフグリッドで使えるような、しかも場所が移動できるようなものがあったら凄くレジリエントだったという現地の人たちの声も聞いています。そうやって世界の色んな場所をレジリエントにするようなものを開発してインプリメントするということをデザインでやれたら良いなと思っていて、そういう意味でやっていることはこの数年変わっていないかもしれません(笑)。
見えない関係をつなぐデザイン
原田:今日は、NOSIGNERという活動体の名前の由来にも繋がる「形」の話を改めて聞いてみたいなと思っています。「デザインの手前」では、大阪・関西万博のデザインシステムを設計した引地耕太さんにお話を伺ったのですが、その時もデザインの基礎的な力として形をつくることがあるという話が出たんですね。それはたしかにそうだなと思う一方で、太刀川さんがいまお話し頂いた「ADAPTMENT」のようなものというのは形が見えにくいものですよね。ここまでの話からも推測されるリスナーの方もいらっしゃると思いますが、太刀川さんは無形のデザイン的なものを多く手掛けられている印象があります。でも一方で、もともと建築を学んでいて、プロダクトもよくつくられていたり、もともとは形をつくるというところから太刀川さんもスタートしていますよね。そんな太刀川さんのデザインや活動におけるカタチをつくること、カタチの位置づけというのはどんなところにあるのかなという話から聞いてみてもいいですか?
太刀川:ミイラ取りがミイラになるような話なのですが、僕も最初は凄くカタチの人だったと思うんですよね。それこそ大学の時に僕がつくっていたものというのは、いまで言うところのザハ・ハディドさんとかニール・ディナリさんのようなオーガニックな建築のフォームをどうやって当時コンピューターグラフィックスで設計するのかということが出て来始めていた頃で、それが2000年代初頭ですね。当時学生でやっている人は全然いなかったので、それをどんどんやっていこうとしていたんですよね。僕の卒制もかなりウニョウニョしたものだったのですが、そういったものが当時の日本の設計の中であまり理解いただける感じでもなかったなと思っていました。どうやったらこういう凄い、面白い、新しいカタチを世の中に理解してもらうことができるのかとか、どうやったら美しいカタチをそのまま実現できるんだろうかということを考えた時に、色んなやり方があったと思うんですよね。そのカタチをずっと表現としてやり続けるということもあったと思うのですが、僕はやっぱりそのカタチに理由が伴わないとただの表現になってしまうんじゃないかという思いがありました。
例えば、ミラノサローネのようなところで色んなデザインが当然毎年評価されますが、これらにはもちろんカッコ良いものも多いのですが、そのカタチの新しさや面白さは一体何のためにあるのかと言った時に、凄く脆弱なものが多いんじゃないかと。一時のスペクタクルに終わってしまうのではなく、カタチにはもっと本質的な価値があると僕は思っていたので、カッコ良いことは時に正義であると。美しさには機能があるはずだと思っていたので、カタチのファンクションとかカタチが導いていくような方向性とかに興味が出てきました。
太刀川:NOSIGNERという名前は、NO SIGNから来ているのですが、デザインの語源は「designare」という「sign」という言葉から来ています。記号化すること、形にすることからデザインという言葉は来ているのですが、カタチの部分をつくっているのは実はそのカタチを規定する周りの色々な関係性なんじゃないかと。この関係性にフォーカスを当てていくと、ひょっとしたらもっと本質的なカタチがつくれるんじゃないかと思って、そっちのプロフェッショナルになろうと思い、それをNOSIGNERという名前にしてみたんですよね。そういう無形の側のデザインをNOSIGNと呼ぼうと。
原田:「形態は機能に従う」という言葉がありますが、太刀川さんが言うところのデザインは、「形態は関係に従う」ではないですが、ずっと関係とカタチの関係性を考え続けてきたキャリアなのかなという気がしています。
太刀川:まさに。例えば、僕がデザインしたものに衛星かぐやの月のデータをそのまま3Dプリントした照明があります。
原田:無数のパクリが生まれたという作品ですね。
太刀川:何百万、何千万台世界中にパクリがあるかもしれません(笑)。こないだ300円ショップでも見つけたのですが、これは純然たるインダストリアルデザインですよね。これをつくったのは2011年で、東日本大震災があった時だったんですね。震災で東北の明かりがすべて消えて、僕も早めに被災地に入って「OLIVE」などをやっていたのですが、その時にスーパームーンが出ていたんですよ。20年に一度くらい明るいスーパームーンが出ていて、希望の光にも見えたし、畏怖の光にも見えたんですよね。なぜなら、月というのは重力と関わりがあるから地震にも影響があるんですよ。そういう意味では、あの時のあの光は僕の中で凄く希望の光で、月のような明かりをつくりたいと思ったんです。2007年から衛星かぐやが飛んでいたのですが、そのデータを使ったデザインを誰もいままでつくったことがないことがわかって、それをつくったのですが、それはひとつの記憶の形でもあるし、サイエンスコミュニケーションでもあると思うんですよ。僕は夜の明かりはすべてがある種月の光のコピーだと思っているところがあって、それは夜一番明るかったからのが月だからです。昔からそれに慣れ親しんでいる関係性があったことが、多分あの形を本質的なものとして伝えしめ、だから世界中にコピーが生まれたと思うんです。僕らの中に見えない関係性があったということだと思うし、それだけ世界中に広がるデザインをつくったけど、月の形をつくったのは僕じゃないんですよね。だから、関係性を可視化しただけであって、そのためにカタチをつくる力が必要ではあったと思うけど、やっぱりそうものだと思うんですよ、カタチって。何かをつくっているようなんだけどつくり手が、実はつくらされているというか。だからこそ、僕らが本当に本質的な形を追いたいのであれば、何が形をつくりしめているのかを見た方が良くて、つまり関係を見た方が良い。カタチそのものをつくろうとすると、実は大したカタチがつくれないという矛盾がよくあると思うし、多くのデザイナーがそのことを知っているんじゃないかと思うんですよね。
原田:まさにそこに繋がる話として、太刀川さんは自分たちがつくるものを伝える時に、つくり方の話と同じかそれ以上に、つくる理由の話をしますよね。それをNOSIGNERでは、「WHY」と「HOW」という言い方をしていますが、どれだけ「WHY」に目を向けられるかというところで、カタチであるところの「HOW」が必然的に見えてくるというのがNOSIGNERのデザイン哲学的なところなのかなと。
太刀川:そうですね。やっぱりそういうものじゃないと良いものだと僕は思わないんですよね。社会も思わないんじゃないかと僕は思うんですけどね。もしスペクタクルのためだけにデザインを使ってしまうことがあるのだとしたら、それはデザイナーが自分たちの将来の首を締めていると僕は思うんです。例えば、先ほどミラノサローネの話を少ししましたが、僕も以前にインスタレーションをしたことがあります。AGC旭硝子のインスタレーションをつくったのですが、AGCはそれまでも色んなデザイナーとコラボレーションをしていたんですよね。
でも僕の中で、何でインスタレーションをつくらないといけないのかがよくわからないところがあって。それは広告としてはわかりますよ。でも、わざわざたくさんクリエイティブな人たちが来る場所でガラス屋さんが巨額をかけて展示をする意味はなんだろうと考えた時に、やっぱりガラスを知ってもらうことだろうと僕は思ったんです。それで何をつくったかというと、6000枚のガラスをつなげて、世界最大級のガラスの分子構造模型をつくったんですよね。世界最大なんじゃないかな、あんなことをやる人はいないですからね。ガラスでできたガラスの分子構造モデルをつくったんですが、これは風で動くんです。ガラスは「アモルファス」という構造を持っているのですが、その構造は結晶のようで結晶ではない、液体と固体のあいだのような構造を持っていて、実は分子構造が揺れているから分子が動くんだそうです。その現象をホロンというらしいのですが、僕が何をしたかというとその分子構造模型をつくって、ガラスの科学者を現地にたくさん連れて行って、展示の端っこにガラスのカレットや強化ガスを実際に手で触ってみてどれくらい強いかが試せたり、分子構造がこうなっているということを伝えるようなサイエンスミュージアムをつくって、その中にインスタレーションがあって、そのインスタレーション自体もサイエンスの展示であるという形にしたんですね。
「キレイだね」といって歩いて出口まで行くと、そこにサイエンティストが待ち構えていて、やたら長々とガラス構造について語られるという展示だったんです(笑)。それまでの来場者の倍くらいの人たちが来てくれました。最後に妙に熱い人たちが待っている構造になっているので、滞留する人も多い人気の展示となって、『FRAME』という雑誌はその年のミラノで一番良い作品ということで選んでくれたりしたのですが、これも僕の中ではミラノサローネという舞台のひとつの使い方だと思うんです。ミラノサローネをサイエンスミュージアム化して、ガラスについての理解を広げるという。わざわざ展示をするのであれば、そういう新しい関係性をつくれるものをやった方がいいんじゃないかということはいっぱいあると思うんです。それをバチッと結べる瞬間があると、モノは個人のデザイナーを超えていくと思うし、そういうものが見たいんですよね。
「カタチ」と「意味」の一致を目指す
山田:日本のメーカーが期待することと、実際のミラノサローネの役割が乖離している部分はあると思います。AGCさんがそうだということではないのですが、基本的にミラノサローネはトレードショーでビジネスの場なんですよね。何億何兆というお金が動いていて、各メーカーが今年1年間のビジネスをどうしていくのかということを決める場であって、そのプレゼンテーションのために何をするのかということなんですよね。おっしゃるように日本のメーカーは、自分たちの製品やブランドイメージのPRの場に割と使っている傾向が強くて、日本のメーカーはオンゴーイングのものを出すので、「いつかは使えます」というところになってしまって、意外と商談にならないというか。「じゃあできたら教えて」ということになりがちなんですよね。そこで連絡先は回収するけど、割とヨーロッパの人たちは使えるものであることを望んで来ていて、その想像力を広げるためにインスタレーションをするというのが本当は正しいことなのかなと。
太刀川:おっしゃる通りだと思いますね。本来は可能性があるのにも関わらず、その可能性が発露されないままでいるというところが、クリエイティブの介入できる余地だということなんですよね。つまり、それが顕在化するということがクリエイティブの勝利だというところがある。山田さんが「本来ミラノサローネはそういう場所なんです」とおっしゃった通りで、そういう可能性があるならば、なぜそういう風に使わないのかということもそうですし、トレードショーの場であるということを超えて、ひょっとしたらもう少しインスピレーショナルな場にもなるかもしれない。もっと言うと、ミラノサローネがあったことで世界が平和になったということが起こったって良いと僕は思うわけです。あれだけのことが起こっている場なわけですから。
有形、無形ということを対比させてくれたので、そういう意味でミラノサローネは非常にカタチの場であると思うんですよね。そういう場所に行った時はカタチから関係を目指していくこともできるし、また逆に関係性からカタチを目指していくこともできるはずです。僕はいま環境省さんと一緒に「ADAPTMENT」というプロジェクトをやっていますが、これはもう関係性の話なんですよね。つまり、これからどういうふうに人類が気候と関係できるかということで、都市のデザインという形でどういう風に具現化できますか、方法論にできますかということを手法としてまとめていっているわけです。「進化思考」だって、創造的教育の手法をつくっているものなので、これも関係性の話なんですね。だけど、それが最終的にどんな教育キットになるのか、どんな都市のビルのカタチになるのかということはその後に待ち構えていることであって。時間はかかるかもしれないですが、関係から追っていって新しいカタチが導き出されることもあると思うんです。2つはまったく矛盾するものではなくて、一致を目指すべきものだと思っているんです。
太刀川:マーティン・ルーサー・キングなんかも似たようなことを言っていて、彼は「愛」と「力」に例えているんですよね。「愛のない力は暴力である、力のない愛は無力である」ということを言っているわけですが、「愛のない力」というのは要するに「関係性のないデザイン」にも僕には聞こえるんです。関係性のないデザインをやってもしようがないし、時に暴力であると。でも、カタチがなくて関係性だけを世の中にわかってもらおうとしてもなかなかわかってもらうことが難しく、無力であると。
だから、むしろ「こういう関係性があったらいいのに」ということを切実に願っている人たちにこそデザインを手にしてほしいと思うんです。そうするともの凄いものができると思うし、世界が変わるようなことはそういうところからしか起きないし、そういうものが見たいなと思う。いま意味とカタチが乖離していくようなことがあってしまうのだとしたら、例えば「来季の商品のためのデザイン」みたいなことってあまり意味ないじゃないですか(笑)。どこに意味は行ったんだと。別に去年のものでいいよという感じがするじゃないですか。そういうことではないとした場合、僕は意味の方でちゃんと旗を振る必要があるかなと2006年は思った。でもいまは、みんな多分それを理解していると思うんですよね。この20年くらいでサステナビリティのことをデザインで言う人も非常に増えたと思うんです。そうすると今度は逆に、カタチがおざなりになることもあると思うんですよね。「美しい関係性を紡ぐことができたからそれはグッドデザインである」という考え方もあると思いますが、でもやっぱり美しくカタチにも昇華されているから良いということは間違いなくあるわけです。つまり文武両道ですよね。自分たちがどっちに偏っているのかということを見ないといけないと思うんです。
原田:揺り戻し的なところがありますよね。やっぱりどんどん意味にデザインが向かっていくと、カタチはどうするんだという話にいままたなってきている気がします。
太刀川:そうですよね。だから往復なんですよ、これは。両方とも必要なのに、「カレーライスにカレーとライスどっちが必要なんですか?」と言っているような話なんですよ。
AI時代に価値が高まる2つのエッジ
原田:AIが最終的にカタチもつくれるとなった時に、おそらくAIがつくるカタチというのは、意味にメチャクチャ紐づいているものが大半だと思うんですね。これまでのパターンから導き出されたカタチと意味の繋がり方だと、どうしても出てくるものが同じになってしまうという現象が起こる。そうなった時に、デザイナーがつくるカタチにおけるその人なりの癖や個性みたいなものがないと、本当にすべてAIがやればいいとなっていく気がしていて、その辺の関係性が今後どうなっていくのかということには興味があります。
太刀川:AIが学習しているのは、基本的にはこれまでの表現なんですよね。だから、フロンティアというかフロントランナーたちの価値というのが本来であればもっとこれから上がらないといけないんだと思うんです。フロントランナーという言葉を僕は2つの意味で使っていて、ひとつはディテールにおける新しい表現手段を模索している人たちです。AIがまだ学習していない新しい表現手法を発明し続けている人たちはとても大事なんです。要するに、まだ学習のデータセットがない表現のエッジというか、ミクロな意味でのフロンティアがあると思うんですね。
原田:それぞれのデザイン領域において専門性を突き詰めているような人たちということですかね。
太刀川:いま評価されているデザイナーは、そういう先端的な表現を探求してきた方々であったから、その方法論が色んな人にインスピレーションを与えているので、その通りだと思います。かたやデザインがまだ使われていなかったり、つながっていない領域に対してアプローチをかけているような、新しい事例やケースをつくっている人たちもまだAIの学習データセットがないんですよ。これはマクロな意味でのエッジですが、AIがまだイメージできないものだと思うんです。問いかけられたこともないし。おそらくこの2つの領域はこれからデザインが進化していくなら、絶対に守らないといけないというか必要な領域なのですが、AIの登場によって両端におけるトライアルがどれくらい侵食されたり、あるいは応援されたりするのかというのはちょっとわからないですね。
応援される側よりも侵食される側の方が多いんじゃないかという気もするし、そういう意味ではどうなるか不安だなというところはなくないです。侵食されるというのは表現としてではなく、そもそもデザインなんか頼まなくてAIに任せればいいじゃんというような侵食があったら、そういう実験もできなくなってしまうので、そうはならないといいなと思いますけどね。でも、いま僕らは人類が経験したことがないことに触れているのでわからないですよね。
山田:結局は道具としてどう使うかということですよね。よく言う話ですが、道具に使われるのではなく、使っていかないと意味がないので、そのためにどういう条件設定をするのということを自分の中で考えなくてはいけなくて、それはAIに入れるパラメーターの話ではなくて、自分のマインドの問題というか。
太刀川:そうじゃないですかね。その問いかけ自体に価値が出ているということであって、膨大に答えのバリエーションを出すということに対しては、AIは凄く役に立つだろうと思います。先ほどのエッジの表現という話とつながっているんですよ。そういうトライアルをしたことがなければ学習データセットもないし、それは新しい問いになり得る。そういう領域とつないだことがないというデザインについても新しい問いになり得る。かつて他のデザインのケースとしてやられたことがないような問いかけを持つ人にとって、AIは本当に夢のツールになるでしょうね。
原田:AIなりテクノロジーがどんどん進化していくことで、デザイナーが自分自身、この時代においてどういうポジションで何をしていくのかというある種自分の立ち位置についての問いを持つようなことが、これまでで最も重要になっている時代なのかもしれません。
太刀川:それは本当に思いますね。
原田:それこそ太刀川さんがおっしゃっていた先端で表現を突き詰めていくところに自分のクリエイティビティを活かすということもひとつの立ち位置だし、デザインが届いていない場所にデザインを届けるというのも自分の立ち位置で、そうしたデザイナーとしてのあり方というものを「WHY」として持っているかどうかというところがより問われてくる時代になってきているんだろうなという気がします。
今日は太刀川さんにデザインにおけるカタチの話、その背景にある理由や関係の話を伺いました。次回は、NOSIGNERがこれまでに実践されているプロジェクトに共通して見られる「領域の越境」というテーマでお話しを聞いてみたいと思っています。来週もよろしくお願いします。
太刀川:よろしくお願いします。
山田:よろしくお願いします。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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